見かけたのは春休みだった。
すぐに高校での新生活も始まったので、バイトのモデル業は多少抑えるようにした。
そうなると都心に出ることも少なっていき、あの子のことを探す時間も少なくなっていった。
このまま忘れた方がいい、そう自分に言い聞かせた。
だがふとした時に思い出し、どうしようもない気持ちになってしまう。
もしかしたら思い出補正がかかってて、どうってこともない子だったのかもしれないだろうと自分を誤魔化…言い聞かせるしかなかった。
時間が経つにつれ、どうして俺がこんな気持ちになんなきゃなんねぇんだよと思うようになった。
苛立ちに変わってきたんだ。
これからずっとモヤモヤしたまま過ごさなきゃいけないのかとうんざりしていた。
が、それは突然破られることになる。
思いもよらない場所で再会できたからだ。
とはいっても、向こうは覚えてはないだろうが。
相葉君からあのC棟に引っ越してきた人がいると、いつものようにみんなで見に行った。
特に興味があったわけではなく、3人と騒げるネタができて楽しいからだ。
それは、多分みんなも同じはず。
団地の影から覗いてる3人の後ろからチラッと見てみた。
なんだ。
綺麗だけも、どう見ても30超えてるし、だとしたら俺らの倍生きてんじゃん。
途端に興味が薄れてく。
みんなもそうだったのか、屋上に戻ろう的な空気になったその時。
その女性が『しょうちゃん』と呼び、『はーい』と出て来た子を見て固まった。
見覚えのある瞳と唇。
それはまさしくあの公園で泣いていた子だったからだ。
こんなところで会えるなんて。
ボロいC棟から出ててくるなんて。
2人が引っ越し業者に挨拶をして建物に入っくまでの数分の間、その子から目を離さずにはいられなかった。
だからだ。
ニノの様子も変だった事に、俺は全く気がつかなったんだ。