「何にした?相葉君はバスケ?」

「うん。野球と迷ったんだけど、おおちゃんがバスケの方がいいって言うから」

「野球わかんねーんだもん。バスケなら競技する人数少ねえし、俺が出なくてもいいかなって」

「大野君、運動神経抜群にいいのに、何故か嫌がるよねえ」

みんなクラスマッチでどの競技に出るかの話をしている。
二学期は行事が盛りだくさんだ。
それこそ体育祭があったばかりなのに、クラスマッチをすぐする理由が俺にはよくわからない。
12月の初めには文化祭もあって、忙しすぎるんだよこの学校は。
ちなみに俺も潤君も野球で、翔ちゃんはサッカーだ。 
ドッチボールと迷ったが体に当てられるのが嫌だからそっちにしたと言っていた。
高校のクラスマッチでドッチボールって!と思ったが、シンプルが故にこれがかなり盛り上がるらしい。


そして当日。
クラスマッチは現役部員は出てはダメだが、退部していたら問題はない決まりとなっている。
夏まで野球部員だった奴がいる三年に当たってしまった俺と潤君のクラスは早々に敗北が決まった。

「あ、ニノ達も終わった?」

「そっちも負けたんだ?俺も潤君のクラスも1回戦で負けたよ。つい最近まで現役部員だった3年に勝てるわけないって」

「1年相手に本気なんだもん。あんなの無理無理。受験勉強に忙しい3年に華を持たせるってことで。あれ?じゃあ翔ちゃんは?」

「勝ってんじゃねえかな。確かしばらくは1年同士の対決って言ってたし」

行ってみようぜと、4人でサッカーの競技が行われているグランドへ向かった。
やはり勝ち残ってて、今まさに準々決勝が行われてる最中だった。
翔ちゃん達は2年相手でもそこそこ活躍してるらしく、女子連中がここぞとばかりに大きな声援を送っている。 

ちなみにクラスマッチは競技の時間が短縮されていて、今は残り5分ってところだ。
1-1だがやや優勢にみえるうちのクラス。

「おー頑張れ!翔ちゃん!」
俺らの声援が聞こえたのかこっちに向かって手をあげる翔ちゃん。
その翔ちゃんにボールがパスされる。
間近にあるゴールを目指し、ドリブルしてる最中にスライディングされ倒れ、途端に女子たちが悲鳴を上げる。

「あれ明らかな反則だろう!」と、潤君がグランドへ飛び出して行った。
膝を抱え立ち上がれない翔ちゃんを潤君が抱きかかえようとしたが、断固拒否され肩を貸してもらうことにしたようだ。
二人で寄り添って歩く姿にきゃーっとハートーマークを付けて叫び出す女子たち。
なぜここで歓声が上がるかよくわかってない翔ちゃんと、特に気にしてない潤君はそのまま保健室へ向かって行った。
その後を駆け寄った俺らも付いて行く。
グランドではスライディングをしかけた相手チームの選手が「もう、最低!」と一部の女子達ら盛大なるブーイングを受け、肩を落としていた。

「大丈夫?血が出てんじゃん」 

「翔君、病院いこう」

「ちょっとだけだから大丈夫。反応が遅くなって避けれなかったよ」と笑う翔ちゃんは、傷より足を捻挫した方が痛いと言っている。

「本当に行かなくて大丈夫なの?」

「うん」

この二人のやりとりが不思議で3人で顔を合わせる。
ちょっと擦りむいてるだけで、病院ってワードが出るほどでも傷だ。
潤君の真剣な眼差しに、口を挟めない俺と相葉君君。
が、大野君は「松潤は大げさだなあ」とのんびりした口調で言った。

「だって翔君は…」

「俺、ちょっと血が止まりにくい体質なんだ。それを潤が心配してるだけ。でも小さい頃の話で、こんだけなら今は大丈夫なんだよ」

保健室のドアを開けて、椅子に座った翔ちゃの顔色は青白いように見えた。
気がついた保健医が、やっと処置道具を持ってきた。

「今日は負傷者多いわねえ。あ、櫻井君か…それじゃあ部外者は廊下で待ってて」と俺ら4人は保健室から追い出された。

「…血が止まりにくいって…」
相葉君が心配そうにソワソワしている。

「なんか…色んなもの抱え込んでるな、翔君は」
ため息をつきながら言った大野君の言葉に誰も返事ができなかった。