そうやって遠巻きに見ていた俺。
様子見のつもりだった。
クラスメイト達も相変わらずで、でも当の本人のしょうちゃんは慣れているのか、そんな周りに対して特に気にしてないようだった。

1ヶ月近くもだった頃、あることに気づく。
しょうちゃんは週に一度程度、欠席することだ。
そしてそれは早退、または遅刻の場合もあった。
体の調子が悪いのかとも思ったが、本人にはそんなとこも見当たらなく、また担任も特に欠席理由を言うこともなかったので、そこは噂話が大好きな女子が色々と無責任な想像をしては盛り上がっていた。





今日も話しかけられなかったなあ…
部室の窓から太陽の光が差し込む。
もう夏も本番になるのかな。
あちいの苦手なんだよ。



ひとつ躓くと、なかなか先に進めない。
でもどうしても『しょうちゃん』のことが知りたい。
恋とか友情とか、どんな感情かは自分でもわかんない。
ただ気になる。
それだけだった。
なら、ちゃんと知れたら意外にすんなり終わるかもしれない。
それはそれでいいんだし。
とにかくどうしてこんなに『しょうちゃん』のことが気になるのか早く解決したかった。


机にうつ伏せになってる汗がべとついてきた。
と、そこへドアが開き風が通り、ドタバタと入ってきた。
顔を上げなくてもわかる。
この部室は…そもそもこの部活4人しかいない。
この乱暴な開け方はもちろん相葉君だ。

「ニノ!聞いて聞いて!」

案の定、相葉君だ。
スポーツ万能なくせして、なぜかこの同好会に入部した。
なんでも4人でいたいんだと、臆面もなく言う彼は体育会系の部活から色々な勧誘を受けてたはずなのに。

「なんだよ?今日も無駄に元気だなあ…」

汗を拭こうとタオルを探してカバンを弄った。

「俺、さっき翔ちゃんと話したよ!めっちゃ感じいいじゃん」

「クラスも違うのに、どこに接点があるんだよ?」

「さっき廊下でぶつかりそうになったんだよ。で、謝ったら「同じ団地だよね?」って向こうから言われてさ。そのまま団地周りの店とか病院のこととか聞かれたんだよ」

今度は静かにドアを開けてくる人物がいた。
大野君だ。
彼は美術部と兼用しているが、こっちで絵を描くことが多く、この狭い部室はあちらこちらに絵具やキャンバスが散らばっている。

「俺も昼休みに話したよ。裏庭でスケッチしてたら話しかけられた。コロコロ笑ってさ。翔君って結構表情が変わるんだな。いつも静かにしてるからわかんなかったよ」


マジか?
やっぱり天然系は強いな。

「今度、俺の作品見せるって約束したんだ。いつにしようかなー?」
穏やかに話す大野君に、心の中でめちゃ焦る。

ソファから起き上がる人物がいた。
そういや、潤君がいちばんの先客で寝てたんだった。

「ここに呼んだらいいじゃん。大野君の絵って美術部よりここの方が多いだろ?」そう言って、部室を片付け始めた。