気づいて欲しいとか、
束縛とか。

そんなややこしい心情はかなり苦手で、尻込みしてしまう。
しかも、しかも!
下着に香水って。
何?
なんか怖いんですけど…

そんな俺の心情を読み取ったのか、相葉君が「はぁ」と1つ息を吐いた。

「もしかして引いた?…あのさ、松潤って結構恋愛経験豊富と思うんだ。そんな松潤が翔ちゃんの事に関しては、一切自信がないように見えるよ。だからさ…気づいて欲しくて香水を付けるとかの行動も可愛くは思えない?」

なんとも彼らしからぬ客観的で、冷静な言葉だ。

「松潤は
不安だし、本当に余裕がないと思うんだ。だって幼馴染の俺と話してる時でさえ苛立ってるように見える時があるし」

「相葉君とも?」

「うん。松潤が知らない昔の話とかを翔ちゃんと2人でしてるとそんな感じになる事がある。前から何となく思ってたんだけど、最近すごいわかりやすいよ。翔ちゃん、気づいてないでしょ?」

「え?ん、なのわかんないよ。松潤は俺に対していつも普通だし、でも…」

でも、相葉君が言うならそうなんだろう。
彼は朗らかな性格だが結構繊細で、他人の気持ちにはとても敏感だ。
そしてその辺りに若干疎い俺は、学生によく彼から指摘されたものだった。

そうこうしてる間にお目当の雑誌を見つけた相葉君はレジを済ませ、自分は何も買わないまま2人で店を出た。

「松潤は自分が知らない翔ちゃんの友達の多さを知って焦ってるってのもあると思う」

確かに俺は友達は多い。
それは仕事柄、普通の会社員よりはたくさんの人間と知り合う事が多い職種って事もあるし、俺が性格上人に興味があるのも関係してるだろう。
ちょっとでも好感を持てば食事や飲みに誘ったり、逆に誘われたりして。
だからか老若男女問わず多種多様な面々と色々な付き合いがあるし、人数も多い。
そしてそれは学生の頃からそうで、今も続いている。
でもそれに関して言えば、松潤だって友達も知り合いも多いし、俺は全く気にならないけどな。

…友達が多いとか、誰とどんな関係だとか。
それをいちいちあれこれと詮索されるのも疑われるのも億劫で、今までの恋愛で破局の原因はいつもこれだったといっても言い過ぎではない。

もしこれが男である松潤だったらどうなるの?
まだはじめの一歩すら出てない状態なのに、2人の関係性の先行きに不安が広がる。


あれこれ考え焦り始めた俺の心情を知ってから知らずか、相葉君が話を続けてきた。

「松潤のそんな感情に気が付かないのは、翔ちゃんが嫌がるだろうから見せないようにしてるだけじゃないの?…まぁ最近全く隠しきれてないけどね」

翔ちゃんが鈍すぎてそれに気付かないのもあるんじゃない?と続けた。

松本の擁護かただの事実か。
それとも俺への非難かわからないようなことを言う相葉君。


むぅ

と考え込んでしまった俺に、フォローのつもりなのか、彼はにっこり微笑んだ。


「でもね、俺は好きだな。それ」

「すきってなにが?」

「『恋人へ自分の香水をつける』っての。だって一緒にいるみたいな気にならない?」

「一緒にいる?」

「そう。たとえば最近忙しいからなかなか会えなくてさ、でもそんなときって余計に会いたくなるし、構って欲しいじゃん?だから香りが同じって、それだけでなんだか落ち着くような気がしない?
離れてても一緒にいるような気にさ。例えば街中で好きな人とおんなじ香りしてたら、思い出したりして、つい付いて行きそうになったりしそうになる事あるよね。え?ないの?」

…俺はないですけど。
 
しかし、まあ。
なんともロマンチックな話だな。

でもそれはあくまでも相葉君の想像だ。
真相は松潤に直接聞くしか方法はないと、彼とは分かれ家路へと急いだ。











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