なんか変だな、と感じた。
なんとなく、松潤が側にいるような気配。

…いやいや、そんなはずはない。

彼は今日はお休みで、朝早くから仕事へ行く俺を労うように自分も早起きをし、よれよれしながら朝食を用意してくれた。
しかも、いいっていうのに飼い猫と一緒に玄関までお見送りしてくれたのだ。
そこまで動いても完全に目を覚ましてないであろう彼は、そのままベッドへ直行したはずた。
それが故に今、松本がここにいるはずなど絶対にない。

それはわかっている。
しかし、やっぱりその気配は消えない。
外出しても戻ってきても、お昼過ぎても。

不安に思いながらも、午後からも案件があり外出をした。
目的地への道沿いにある家電製品店。
窓側に向かって何台も置いてあるテレビを何気なく見てビクッとした。

不気味な音楽が、演出過剰とわかっていても驚いてしまう。
そして次に霊感特集、という血を連想させるような赤い文字。
夏にやればいいものを、なぜこんな季節に?
理不尽な怒りを感じて、そのまま通り過ぎようとした時、固まった。

そこには「生き霊!?」の閉じと一緒にモザクク処理と声を加工された女性が画面に映っていた。

『彼の気配を感じたんです。会社にいってるはずなのに。変だな、と思い携帯へ連絡したら繋がらないので会社へ電話しました。でも、まだ来てないって言われて.その日は大雨だったし、電車が遅れたりしてるのかもしれないって思いました。
でも、それからすぐに電話があり、駅から会社に向かう途中に信号無視の車にはねられたって…』


…ってな内容の話をクドクドとしている。

顔がわからない女の話の途中から、急に不安になってくる。
まさか事故?何かに巻き込まれてるのか?
テレビでは相変わらず不安を煽るような音楽が流れていた。
思わず、スマホを取り出り松潤の番号を慌てて探す。


1コール、2コール、3コール…
早く。
早く出ろよ!


けれど、何度掛け直しても留守電につながるだけで焦りは募るばかり。

お昼はとっくに過ぎているし、寝てるには長すぎる。
いてもたってもいられなくなって智君へ電話した。
隣に住んでるし、なんだったら見に行ってもらえるかもと踏んだのだ。

が、こちらも留守電。
なんで?なんで出ないの?

次に休みではあるが、何か知ってるかもしれないと相葉君に電話する。
が、こちらも虚しくコールが鳴るだけだ。

みんな揃ってなんでだよ!!
電話くらい出ろよっ!

ニノは…
理由を聞かれた時に、笑われそうでなかなか番号を押せないし、何より取引先との待ち合わせの時間が刻一刻と近づいて来たので繋がったとしてももう時間がない。

…仕方ない。
嫌な予感を飲み込んで、待ち合わせ場所を目指した。