ペンギンの憂鬱 アンドレイ・クルコフ | うさぎの本棚

ペンギンの憂鬱 アンドレイ・クルコフ

ペンギンの憂鬱
ペンギンの憂鬱

まずタイトルがなんともいい。
ペンギンが憂鬱になるって、擬人化した
喋るペンギンでも出てくるのかと思いきや、
ちゃんと動物としてのペンギンが描かれている。

皇帝ペンギンは大好きで、動物園や水族館に行っては
皇帝ペンギンを探し求め、なんとも愛らしい姿を
時間のたつのも忘れて眺めてしまう。
この作品にも描かれていたけど、彼らはたいてい
いつも立ったままだ。
以前立ったまま居眠りをして、ゆらゆらしている
ペンギンを目撃したことがあった。
倒れそうになっては目を覚まし、しばらくすると
またゆらゆらし始める。
なんとも可愛いじゃないですか!

この物語の主人公はそんな可愛いペンギンと一緒に
暮らしているのだ。
以前テレビで(日本での話)家の水槽でペンギンを
飼っている家族のお話を見たことがあった。
首に縄をつけて散歩もしていた。
でもこの物語では、部屋のなかで一緒に暮らしているのだ。

主人公である売れない小説家のヴィクトルは
財政難になった動物園からペンギンを引き取った。
ペンギンの名前はミーシャ。
ヴィクトルとミーシャは特にベタベタとした
愛情表現をするわけではない。
(ま、ペンギンを抱っこしようにも
ちょっと重くて大変そうなのだけど…。)
ふと気付くと、ヴィクトルの背後に立って
じっと見つめていたり、ヴィクトルの膝にお腹をおしつけてきたり、
そっとくちばしを乗せたりするのだ。
想像しただけで、可愛いじゃないですか。

物語自体は旧ソ連崩壊後のなんとも情勢不安定なウクライナが舞台。
銃や暗殺が身近なものとして登場している。

ウクライナに関してはほとんど知識がなく、
実はオレンジ革命で初めて知ったくらいだ。
(おはずかしい)
当選したユーシェンコ氏の顔は腫れ上がり、
別人のようになっていた。
野党が食事に毒を入れたとか…。
小説の世界のようなミステリーな出来事が
現在のウクライナでも起こっているのだ。


作者アンドレイ・クルコフはウクライナの作家。
なかなか世に出られなかったのは
公用語のウクライナ語ではなく、ロシア語で
執筆しているから…という説もあるらしい。

このような混沌としたなんとも暗い重い物語りなのだけれど
ミーシャの登場によって、少し和らげられている。
謎が解けないままでなんともモヤモヤした部分も
残るけれど、それもまたミーシャの可愛さで帳消しになってしまった。

訳者によると村上春樹の小説の雰囲気とかなり似通っているらしい。
実際、作者は『羊をめぐる冒険』がお気に入りだとか。
この作品は未読なのでよくわからないが、
なんとも不思議な淡々とした雰囲気の作品だった。