ーScene1ー

「才蔵さん遅いなぁ。」

お祭りが開かれた町並みは
いつもより活気づき
人々も浮足立っているのかもしれない。

日も落ち、明るく照らされた
たくさん提灯の灯りがとても幻想的だ。

食べ物を買いに行ってくれた才蔵さんの帰りを
一人待っていると…

「ねえ、さっきの人かっこ良くなかった?」

「一人なのかな。やっぱり声かけてみる?」

そんな声が聞こえてくると
私は不安で胸がいっぱいになる。
普段、才蔵さんの事を近くで見ている私ださえ
浴衣姿の才蔵さんは、また一段と
艶っぽさを纏っていて
大人の色香を漂わせていた。

「あ、いた!さっき人!」

「ねえ、いこ!」

そんな女の子達の後ろ姿を
目で追いかけると…

そこには、山盛りのお団子と
私のお願いした綿飴を両手いっぱいに抱えた
才蔵さんの姿があった。

「あ、あの…そのお団子持ちましょうか?」

「もうすぐ、花火が始まるんです。
一緒にいきませんか?」

町ゆく女の子の達は頬を赤らめながら
目をキラキラさせて次から次へと
才蔵さんに話し掛けてゆく。

その光景を見た瞬間、
私はいてもたってもいられずに
走りだしていた。

「だめー!!!!!」 

人混みを掻き分けながら
才蔵さんの元にたどり着くと
自分でもびっくりするほど
大きな声が出た。

「…お前さん、何してるの。
動かないで待ってる約束でしょ?」

「だ、だって!才蔵さんが!」

「ん?俺がどうかした?」

才蔵さんは口角をあげながら
少し嬉しそうに私の顔を覗く。

「女の子達に…囲まれてるし
みんな、才蔵さんの事…格好いいって…」

「何、ヤキモチ?
お前さんが、そんなに妬いてくれるなんて
珍しいね。」

才蔵さんは私にだけ一瞬
少し困ったように微笑むと
得意の作り笑顔を振りまきながらこう言った。

「悪いね、俺の嫁が。
こいつを怒らせると厄介だから。
もう俺に近づかない方がいいんじゃない?」

「……ちょっと!才蔵さん!」

いきなり才蔵さんの口から嫁と言われた事の動揺と
私が怒るとこわいと悪者のように言われた理不尽さに
口をへの字にし、才蔵さんに視線を送る。

「なんだぁ。やっぱり奥さんいるんだ。」

「残念。帰ろ?」

でも、周りにいた女の子達には
才蔵さんの一言は効果抜群みたいで
みんな少し、落ち込んだ表情をしながら
その場から離れていった。



ーScene2ー

屋台で賑わっていた町並みをぬけて静かな神社の境内に腰をおろす。


綿飴を食べながら、チラっと隣に視線を送ると
才蔵さんは上機嫌で山盛りの団子を頬張っていた。

「才蔵さん、お団子美味しいですか?」

「…ん。お前さんの団子の方が旨いけどね。」

「そ、そうですか…///」

嬉しい言葉をかけて貰っても
私の脳裏には、さっきの
才蔵さんが女の子達に囲まれてた姿が
はっきりと残っていて
心のモヤモヤが消えない。

あっという間に舌の上で溶けていく
綿飴がほんの少しだけ
落ち着かせてくれている気がした。 

「ねぇ、こっち向いて?」

不意に才蔵さんに呼ばれて顔を上げた瞬間

「ちゅっ…ん、…やっぱり甘いね」

才蔵さんは私を唇を舐めるように口付ける。

「さ、さいぞ…さ………んっ」

その口付けはどんどん深くなっていき
口の中に広がった綿飴の甘さを更に甘くしていく。

「………心配しなくても俺にはお前さんしかいないでしょ?」

才蔵さんは拗ねた子どもをあやすように
優しく頭をぽんぽんと撫でると
ぎゅっとその腕に私を閉じ込める。

「それでも心配なら、ずっと夢中にさせててよ。」

「え…?」

そう言うと、ひょいと横抱きにされて境内の裏側に回り込む。

「これ、お前さんが選んだ浴衣。
………脱がせて?」

腕を掴み、私の手を自ら胸元に引き寄せる。

「才蔵さん///…本当に?」

「他なんて入る余地ないくらい
お前さんでいっぱいだって
分からせてあげる。」

「だ、誰か来たら…」

「もうすぐ花火が始まる。
どうせ、みんな上しか見てないよ。」

見つめあったその目は
優しく、でも妖艶で
最大限の恥ずかしさと理性を持ってしても
断る事なんて出来ない。

時より花火の光が
2人の元に照らされると
より一層繋がりを深く感じるのだった。



ー帰り道ー

「思ってたんですけど
才蔵さんは浴衣はだけ過ぎです!!」

「そ。じゃ、お前さんが直してよ。
でも、今はこうしてれば見えないでしょ?」

腰砕けになるほど
才蔵さんに溶かされた私は
横抱きにされ、才蔵さんの肩に顔を埋めながら
その温かいぬくもりに包まれていた。


ーendー