石川県珠洲市にボランティア活動で通う中で出会った能登半島復興応援ソング「HOME~Grace for all」
 

この曲を作られたのは音楽家で「VOX OF JOY」代表 中田理恵子さん。3歳からエレクトーン、ピアノ、ドラムを演奏。歌うことに全く興味がなかった中田さんが、歌に目覚めたのは大阪のジャズシンガー綾戸智恵さんとの出会い。綾戸さんはデビュー前、石川県によくいらして「ゴスペルやるぞ~」と声掛けをされました。ゴスペル?何かよく分からないけど、音楽仲間を集めコーラスのような感じで始め「語るように歌い、歌うように語れ」と綾戸さんに教えていただいたそうです。

その後、中田さんは自分のゴスペルをみつけようと渡米。NYで3ヵ月滞在。帰国したのは2001年9月11日アメリカ同時多発テロの3日前でした。つい数日前にいた場所で…。自分が出来ることは何だろうと自問自答。翌年2002年「VOX OF JOY」を立ち上げました。

VOXはラテン語で声。VOX OF JOYは「喜びの声」という意味。「私たちは愛されるために生きてきたんだよ」という大きなメッセージをゴスペルで、声で届けようと決意されました。

 

(中田理恵子さん)

 


-中田さんは石川県七尾市のご出身で、金沢を拠点に活動されていますが、能登半島地震が発生した時、どちらにいらっしゃいましたか?

七尾の実家にいました。母と弟と3人で被災しました。遊園地のコーヒーカップのように地面がぐるんぐるんスライドして揺れるような感じで、ガラスなど色んなものが割れだして、古い家なので家の中にいたらダメかもと…。

-ご自宅の被害はいかがでしたか?

家は割と地盤が固めで、家の中はグチャグチャで壁にヒビが入って、瓦が落ち、準半壊でしたけど、幸いにも大丈夫な地域でした。旧市街、一本杉通りという仲見世通りみたいなストリート沿いは結構倒壊していて、家がいっぱいなくなってしまいました。

-震災後、あるプロジェクトを立ち上げたそうですね。

「Pray for Noto」PRAYは遊ぶではなく祈る。「能登のために祈る」私は音楽以外何もしてこなくて無力感にもさいなまれて。私たちに出来ることは祈ること、ゴスペルは祈りの音楽。祈りの力が物事を動かすというのをこれまでにいっぱい見てきました。

金沢でゴスペルコンサートを2月3日に予定していて1月6日に練習会で集まることになっていました。まだ親戚が無事かも分からないという人も沢山いらした中で祈りの会をしようと。「神様どうぞ能登を助けて下さい。私たちの大切な仲間を守って下さい」と。そこから月に1回集まって祈り歌う会を金沢で毎月続けています。先日は七尾市でも開催しました。

*****

 

復興応援プロジェクト「Pray for Noto 〜祈りと歌の会」を知ったのが今年6月22日、珠洲市のラポルトすずで開催されたイベント「AkaAka~珠洲心の復興マルシェ」でした。中田さんらが歌う能登半島復興応援ソング「HOME~Grace for all」が心に響き、珠洲の仮設団地集会所で歌っていただけませんか?とお願いしました。

 


(イベント「AkaAka」でのゴスペルコンサート)


そして8月30日(土)「災害ボランティア愛・知・人」主催「VOX OF JOY」ゴスペルコンサートを開催。その日は5人のメンバーが素敵なハーモニーを聴かせて下さいました。

 

(珠洲市 正院町第1仮設団地)

 

2ヶ所目の若山町第4仮設団地の会場に来られたのが、正院町のとっても美味しいオススメのお店「かつら寿司」の女将さん、谷内幸さんでした。お話したことはありませんでしたが思わずお声掛けし、嬉しいことに谷内さんも私の顔を覚えて下さいました。「HOME」をみんなで歌うので、中田さんに歌の指導をしていただくとお聞きしました。

 

(珠洲市 若山町第4仮設団地)

 

 

-谷内さんは、大地震が発生した時どちらにいましたか?

自宅にいて友人たちとそれこそ夕方4時くらいから一緒にご飯食べようと、ちょうど食卓の用意をしながら友達が来るのを待っていました。

-かなり衝撃的な揺れだったそうですね。

もうホントにすごかったし長かったです。自宅を出ると道に亀裂が入って、陥没もしていて、車では自宅の前から一歩も出られない状況になってました。でもお店のことが気になったので、暗くなっていきましたが、主人は三崎町の自宅から店がある正院町まで歩いて向かいました。

-ご自宅の被害はいかがでしたか?

お陰様で一部損壊で住める状況でしたが、発災当初は怖くて家の中には入れず、暫く車中泊をしました。その後、大きい被害を受けたご近所の方もいらしたので、ウチの家に16人で10日過ぎまで避難していました。電気がなく真っ暗で水が出ない。不便さを実感しました。

-お店の状況はいかがでしたか?

店の中は食器が飛び出し、電気も水もきていなかったので、ひたすら日中は主人が食器を片づけたり掃除をしたりという状況でした。地震が続いたので令和5年5月5日の地震後に耐震工事をしましたので、建物はそんなに影響なかったですけど、3年続けて、6弱、6強、7で揺れたので、積み重なって傷んでいるところがあって地震の影響は大きいですね。基礎も大きく割れちゃってますし、でも修復はなかなか…という状況です。

-能登半島地震後、お店を再開されたのはいつですか?

5月のGWあたりにお陰様で再開させていただきましたが、主人がこの店を何とか守りたいと、1月23日からスーパーにお願いしてお弁当販売をさせていただきました。

当時は漁協もダメージを受けていたので仕入れが大変困難でしたが、定置網の方が漁に出られて、船主さんがウチのお客さんでもあったので、主人が「魚を仕入れたい」と言ったら、金沢まで運ぶ前に、船が沖から帰ってきたら好きな魚を持っていっていいよと許可をいただいて、主人が朝1時半に起きて、帰ってくる船を待って、荷揚げの最中に自分の欲しい魚を選んで仕入れるという状況で魚を仕入れていました。

-ありがたいことでしたね。

店を営業して50年、主人は2代目で、先代から受け継いだこの店を何とか守りたいという想いで。店の人が直接漁師から買い付けするというのは普通あり得ないことです。でもお許しいただいたお陰で何とか繋ぐことが出来ました。ありがたかったですね。

-スーパーに提供されたお弁当の反応はいかがでしたか?

最初1月22日、ブリが揚がって、そのブリを見た主人が「ああ、ブリか。久しぶりに寿司握ってみようかな」って。最初はたった15パックでしたけど、並べて数分で完売で「かつら寿司」という名前を見ただけでホッとしたって買っていただきました。

 



-ご主人のお寿司はめちゃくちゃ美味しいですね。女将さんは営業中、お寿司やドリンクを提供されていますが、開店準備中はどのような役割をされていますか?

お店の掃除やドリンク担当なので足りない物を補充したり、お寿司を握るしゃりを準備させていただいています。

 

-しゃりもめちゃ美味しいですよね。ボランティア仲間も「ココのしゃりも美味しいんだよね」って言ってます。

ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。主人が握る魚のネタに合うように、私も主人に心合わせてしゃりを切るように毎日努力してます。

-今までかつら寿司さんで、色んなお寿司を食べましたがズワイガニのお匙で食べるお寿司がすごく美味しくて印象的です。

主人の創作寿司です。うちは握るお寿司にこだわらず、その素材をいかに美味しく食べていただけるか。日々主人が考えて提供させていただいています。

 



-マグロのお寿司はずっしり重たくて、二重になっていて、美味しいし食べ応えもありますね。

上に赤身、下の段にトロが入って、お客さんに大変喜んでいただいています。

 

 

最近食べた「のどぐろ」のお寿司も美味しかったです。

 


*****

以前このブログで「絶品!かつら寿司」というタイトルで記事を書きましたが、本当に谷内さんのご主人が握るお寿司、握らない創作寿司もまさに絶品です。珠洲や能登などの新鮮なお魚、工夫を凝らしたお寿司、毎回大満足です。


事前に予約が必要でメニューはありません。お寿司メインの1人前3500円からのコース。その時に仕入れたお魚を使ってお料理で提供する5000円からのコースがあります。
 

*****

-ところで、能登半島復興応援ソング「Home〜Grace for all」で繋がった私たち。中田さん、この曲が誕生したいきさつを教えて下さい。
 

Graceは恵み、全てに恵みをというサブタイトルが付いています。実は2024年1月1日の能登半島地震のために作った曲ではありません。2023年5月5日に発生した奥能登地震の被災者と支援者の皆さんが、その年の10月1日に復興支援イベントを自分たちで企画しました。ギャラリー「舟あそび」の舟見有加さんが発起人で、NHKの朝ドラで珠洲と輪島を舞台にした「まれ」に出演された常盤貴子さんが、珠洲は第2の故郷のように思ってらして、俳優さんたちと支援金を集め珠洲のために贈られました。そのお金で舟見さんが市民の皆さんに歌で元気になってほしいとゴスペルコンサートを企画し私に声がかかりました。

 

その時に珠洲のために曲をかこうと思って、当時の被災者と支援者の方々から、シェアしたいことや思ったことなど言葉を下さいと募集して歌詞にしたのがこの曲です。珠洲を思う気持ちがいっぱい詰まっていて、共感出来る部分を感じながら作曲しました。

-今、HOMEが今いろんなところで歌われているそうですね。

今年1月6日に集まった時は辛くて途中でみんな泣き出して歌えなくなって。まだ生死も分からない人が沢山いる。私も被災したばかりだったので一旦封印しました。

ところが2月3日、栃木県の作新学院高校の吹奏楽部がこの曲を吹奏楽版に編曲し、栃木県庁で演奏してくれました。かつて珠洲にあった珠洲実業高校。吹奏楽で日本一だったすごい高校で、廃校になった後、珠洲実業のマーチングバンドの伝統ある制服を、作新学院が受け継ぎました。2023年11月、国民文化祭で彼らは珠洲で演奏しました。その1か月半後に大地震で、とてもショックを受けたと思いますが、栃木県庁で演奏、それが私たちがコンサートをするはずの2月3日だったので、落ち込んでいる場合ではない、遠くの子供たちが1週間で編曲して演奏してくれた、私たちの曲を。しかも作新学院の吹奏楽部の生徒が1人歌ってくれたんです。ダメだ、私たち歌わなきゃって。勇気をいただいて、私たちも歌えるようになりました。


今年は東京でゴスペルの大きなフェスティバルがあり参加しました。全国のゴスペルの有名な方々もいらして、この曲を自分たちの地域で歌っていい?って言って下さり、東京や大阪、名古屋でも広がっています。

 



-能登の復興を祈り、願い、この曲が色んな人によって歌われる、嬉しいことです。そして「かつら寿司」の女将さん、谷内幸さんが発起人となって「Home〜Grace for all」を皆さんで歌われる日がやってきました。

-「HOME」とはいつ出会いましたか?

令和5年10月1日、珠洲市飯田町のコミュニティセンターで『VOX OF JOY』や市民の皆さんが作られたグループのミニコンサートがあると知人に声掛けいただいて家族で行きました。最後に「HOME」を聴かせていただいて、胸が熱くなって、本当にいい曲だなって感じました。それが最初の出会いです。

-「HOME」を皆さんで歌うそうですね。

11月5日(水)に私の子供が通う三崎中学校の文化祭で、プログラムの中に保護者の企画が毎年あります。私がずっと「HOME」をみんなで歌ってみたいと思っていて、先生とも相談して歌わせていただくことになりました。保護者と教職員の皆さん、そして地域の方々とも一緒に歌います。

-子供さんたちに向けて歌うということですか?

あと、自分たちですね。聴いていただく方はもちろん、歌う自分たちも一緒に元気になろうという想いを込めて地域の方々にもお声掛けさせていただきました。「HOME」の歌詞で一番いいなと思うのは「同じ星の下に生まれた人と共に 大きな光となって 暗い夜道照らしたい」私自身、何でココに残っているの?ココでやらなきゃいけないことは何だろう?と思ったときに、やっぱりココにいる方々と手をとりあって前に進んでいきたいなって思ったんです。あと珠洲からどうしても、理由があって離れなきゃならない方も大勢いましたけど「HOME空はつながってる HOME変わらず迎えてくれる 一緒に超えてゆこう」という歌詞があるんですけど、どこにいてもみんな繋がっているんだなあと思うと勇気をいただけます。

 


 

-練習はどうですか?

75歳を迎えられた元音楽の男性の先生が退職して15年間、こんな大きな声出したことが無いし、声ガラガラやわって言いながらも
ホントにいいお顔されて歌ってらっしゃるんです。やっぱり歌の力ってすごいなって毎回思います。

-11月5日文化祭の当日、NHKの取材が来るそうですね。

震災後、何度かNHKの番組「あさイチ」で取材を受け出させていただきました。偶然ですけど9月23日にあさイチのディレクターさんから「自分応援ソングin能登」という特集をするので、また取材に行かせていただきたいと連絡いただきました。まさに「HOME」を歌おうと取り組んでいたので、すごいタイミングと思ってお受けしました。
 



-HOMEの曲のこと、珠洲のこと、皆さんが頑張って練習していること、色んな方に届けることが出来ますね。

はい。あと長い間、珠洲でご支援下さった方が「あ、あの人が出てる。あ、あの人元気そう」って、元気に頑張っている姿を見ていただけたら嬉しいなと思います。

-谷内さん自身は、どのような想いで歌いたいと思っていますか?

とにかく楽しく歌いたいなと思っています。聴いてくれる方や歌う方が元気になって、明日への活力や希望を持っていただけるような、そんな時間になればいいなと思ってます。

 

*****

 

11月5日(水)50人以上の皆さんで「Home〜Grace for all」を歌われました。谷内さんからその際に撮影された写真が届きました。ありがとうございます。

 

NHK「あさイチ」の特集「博多大吉が聴く 自分応援ソング in 能登!」
11月10日(月)前編として放送。11月20日(木)後編として放送。谷内さんらが三崎中学校の文化祭で「Home〜Grace for all」を歌われた模様は、11月20日(木)8時15分からの「あさイチ」で放送されます。ぜひご覧下さい!

 



(11/3 ON AIR LIST)
M1.高田志麻/ハレルヤ
M2.VOX OF JOY/HOME~Grace for all(能登半島復興応援ソング)
M3.Bloom Worrks/はじまりの鐘(リクエスト)
M4.小泉今日子/木枯らしに抱かれて(リクエスト)
M5.T字路s/新しい町(リクエスト)