著作:Itと呼ばれた子

原題:A Child Called "It"

著者:デイブ・ペルザー


母親からの壮絶な虐待。

目を覆いたくなる内容です。

この本は虐待を受けた本人自らが

振り返って書いています。

自らの虐待を書くまでには

紆余曲折あったのではないかと思います。

自分自身の傷をわざわざ開いて見せる作業です。

母親への愛憎入り混じった感情も

どのように調整しながら書いたのでしょう?

血を吐くような作業だったかもしれません。

あるいは客観的に淡々と書いたのかもしれません。

本人にしかわからないところです。


印象に残ったことは

まわりの人たちが

それらの虐待を目の前にして

あるいは薄々気づいていながら

何年も放置し続けたことです。


ここ数年、日本でも児童虐待が問題になっています。

客観的に聞いたり見たりすると

それはひどい、なぜ助けなかったのか?

ということになるのですが

実際に目の前にそういう状況がくると

動けないものなのですね。

簡単にできると考えていては

結局ダメで、勇気がいるということを

あらかじめ心構えしておいた方がよいのではないでしょうか?

あとスピードが大事です。

時間がたってしまうと、そういう状況に周りが慣れてしまう。麻痺してしまう。

取り込まれてしまうんですね。

だから、気がついたときに手をうたないとダメなんです。

もうひとつ。

アメリカでは80年代にキャンディーの包み紙にさえ

児童虐待防止キャンペーンのメッセージが書かれていたそうです。

児童虐待を家族の問題としてとらえるのではなく

子育ては社会全体が行うものという認識になっています。

特に核家族化、母子家庭、父子家庭が増える中

日本にもそうした考え方で取り組んでいかなければ

虐待されるこどもたちは救えません。

虐待はいじめと同じ構図で減らすことはできても

なくならないと思います。

1人でも多くを救済できるような

社会のネットワークが機能することを

願うばかりです。