アレクサンドル・ソクーロフ監督によるロシア映画。
20世紀の権力者を取り上げた
『モレク神(ヒトラー)』『牡牛座(レーニン)』に続き、
昭和天皇を主人公にした作品。
彼の素性はかなりの部分が知られていないので
言動を興味深く見ました。
どこまでがフィクションで
どこまでがエピソードとして残っているものなのかも
知りたくなりました。
ダーウィンや海の生き物の神秘を嬉々と話す昭和天皇。
「現人神」として「神」を押し付けられる彼や彼の生活より
小さな海の生物の小さな営みのひとつひとつや
それぞれの完璧さの方が現実感があり
同時に神々しくあったかもしれません。
自分が自分でない生活がいかに息苦しいものか。
いつも感情を表に出しません。
思わず心が揺れそうな内容にも”あ、そう”と淡々と言います。
現実逃避をしているようにも、
思考を停止させているようにも見えます。
そうすることでようやく保たれてきた部分もあるのでしょう。
そうした彼の淡々とした言動の中にも
一人の人間ヒロヒトとしての素の部分、
揺れる心情を描いているこの作品は
様々なイマジネーションをひきおこしてくれます。
なんといってもイッセー尾形の演技はすばらしいと思います。
日系アメリカ人の存在も印象に残りました。