クラシック音楽ファンならずとも、オーケストラの指揮者に憧れる人は多いと思います。私もまごうことなくその一人であります。とにかくカッコいいですもんね。しかし、一見、簡単にできそうな気がしますが、実際は誰もができるわけではないようです。評論家の中川右介さんによれば、

 あるテレビ番組で、男性アイドル歌手が「僕も指揮をしてみたい」と言い出して、「じゃあ、どうぞ」となって、伴奏のオーケストラに向かって指揮棒を振ってみたそうです。それらしい動きだったものの、何の音楽的裏付けもなかったためか、オーケストラの団員たちは戸惑い、まったく音が揃いませんでした。楽団員が意地悪をしたわけではなく、彼らとしても、どう音を出していいか分からなかったのです。

 素人でもできそうでいて、できない。それが指揮者の仕事。ただ指揮棒を振っているだけでテンポや強弱などを指示しているようではあるものの、それだけではない。全身からのオーラのようなもので、曲に感情を込め、それが演奏者に伝わり音となって出てくるという、実に次元の高い世界。うーん、ますます憧れます。