オーディオにおける「良い音」とはどんな音をいうのでしょうか。ちょっと理屈っぽくなりますが、「正しい音」と「良い音」は決して同一ではないですね。「正しい音」は議論の余地のない絶対的なもので、すなわち「生音」です。これに対して「良い音」の定義は相対的で、人によって好みや判断もさまざまに異なってきます。

 一般に「良い音」とは、雑音がない(S/N比が影響する)、音にクセや不自然さがない(歪み、周波数特性、ダイナミックレンジ等が影響する)、分解能が高い、などが良い音の条件とされ、さらにステレオ装置の場合は、音像の定位、距離感、臨場感に優れていることが挙げられています。

 他にもいくつかの要素があり、また、それぞれのバランスということもあり、絶対に「これだ!」と言葉ではなかなか決められないところです。ただ、私としましては、「良い音」の必須の条件として「聴き疲れしない」というのを加えたく思います。長時間聴き続けても決してイヤにならない。派手で賑やかな音楽であっても、あるいはオーケストラのトゥッティ(総奏)の部分でも、うるさいとか耳障りに感じない。「良い音」であればずっと心地よいし、さらには、大きな音量のなかでも問題なく会話ができる。
 
 こういうのは多分に主観的・感覚的な判断基準が含まれますし、またS/N比や歪みなどの数値とも密接に関連し合う部分も多いのですが、決してそればかりじゃない、他の要素も同等かそれ以上に大きく影響してきます。機器の設置や配置の状況だったり、部屋の環境だったり、電気の綺麗さだったり、静電気の影響だったり、空気の具合だったり・・・。もし「聴き疲れ」するようだったら、その原因は様々に存在する。要は「総合力」で攻めていかなければ決して「良い音」は得られないと思っています。