『男が30代でやめるべき習慣』という本があります。このような題名の、この手の啓発本はあまた存在していて、実のところはどれもありきたりな話が多いのですが、ここにはちょっと「おや?」となるような話が載っています。

 たとえば、「〇〇の音楽は△△のパクリだ」というような批判を耳にすることがよくあります。不肖私も、時々そんな言い方をしてしまいます。しかし、この本の著者は、そもそも「ものを知らないからそういうことを軽々に口にするのだ」と指摘します。

 どういうことかというと、ポップスはおろか、音楽に限らず、今ある全ての「文化」は基本的にパクリであり、過去の本を読んだりすれば、ありとあらゆることがすでに紀元前に指摘されていたりすることがわかるはずだって。

 特に若い世代は、すぐに個性とかオリジナリティなどといいたがるものだけど、「オリジン」なるものが、現代人の手のなかにあるわけがない。もしあるとすれば、子どもが世紀の大発見をするのと同じことだ、と。

 ですから、パクリを完全に達成した人だけが、次のステップへ進むことができる。型を学ばなければ、型を破ることはできない。実は同じような話を、すでに室町時代の世阿弥が語っています。きちんと知らずして、物事を軽々に批判するのは慎むべき。強く肝に銘じる次第です。