リスニング・ルームの音響に関してよく言及され問題にされるフラッターエコー。つまり「有害な反響」のことですが、部屋の中で拍手をして音の響き具合を確かめ、フラッターエコーが聴こえると、この部屋はよくないと判断する。オーディオ・マニアの間で、長らく常識とされてきた手法ですね。

 そして、このフラッターエコーを発生させる原因が直方体の部屋の並行平面の壁だとして、壁面を傾斜させたり変形させたり等の工夫が必要とされてきました。ところが最近、数々の実験や体験を経て、どうやらそれはあまり意味がないと分かってきたといいます。

 ある大きなホールで、天井と床が平行な面になっていて、そこで拍手すると明らかにフラッターエコーが発生しているにもかかわらず、ステージでの演奏は、客席にはとても素晴らしい音で聴こえたそうです。つまり、ステージ上の楽器などの音源の位置でフラッターエコーが発生さえしなければ、客席側の環境は全く関係ない、って。

 そして、リスニング・ルームにおいては、ステージに当たる位置にスピーカーボックスが存在しているので、それ自体がじゃまをして元々フラッターエコーが起きにくくなっている。だから、並行平面の部屋のままで何も問題はないそうです。むしろ余韻が美しくなる。実際、多くのマニアのリスニングルームは直方体であるにもかかわらず良い音が出ている、って。
 
 このお話を伺って、わが意を得たりといいますか、ますます強く感じますのが、スピーカー周りの吸音対策の重要さです。そこのところだけ注意すれば、特に有害な反射物でもない限り、ほかの部分はそれほど神経質にならなくてもよいということなのでしょう。実感とも大いに符合する話だと思います。