《統合失調症に使用する》 統合失調症に2430mgで使用する。幻覚妄想に対する力価はリスパダール12mg程度と弱く、病状増悪時や重症例には不向きである。ただ、半減期の長い薬剤であり、有効例の再発率は年5%と再発予防効果は高い。次に副作用に関しては、6mg以下だと副作用のない薬剤であるが、12mg以上だとアカシジア・手のふるえはしばしば生じ、かえって病状悪くすることがある。幻覚妄想・統合失調症以外では、情緒面を安定化する効果がわずかにあり、躁状態やうつ状態に良い場合がある。あと、確率的には10%程度と高くないものの、36mg程度を併用すると高プロラクチン血症や体重増加といった他薬剤の副作用を軽減できる。(エビリファイ使用による体重変動の平均値は半年-1.4kgである。)

 添付文書上だと投与回数は112回であり、612mgから始めて2430mgまで増量するが、半減期は65時間と長く定常状態に達するまで2週間前後を要する。急速に増減を行っても過鎮静・離脱等は生じにくく、定状状態となるまでに時間を要することから、実際の診療では外来だと12mgで始めて1週間後に1824mgに、入院だといきなり2430mgで始めることが多い。統合失調症に対する有効率は治験だと3147%、日常診療の実感だと15%程度と高いとは言えない。副作用に関しては、承認前の治験では不眠27%・不安10%・アカシジア26%・手のふるえ10%・プロラクチン低下11%・体重減少9%・食指不振6%・肝障害CK高値7%である。これは、口渇便秘・ねむけ・体重増加・高プロラクチン血症の副作用はまず生じないことを意味する。ほか、過量投与では2001000mgの大量内服で傾眠・頻脈・嘔吐を生じるが、死亡例は今のところない。統合失調症治療薬剤の例にもれず、エピネフリンとの併用や意識障害のある患者には禁忌である。薬理学上は成分名アリピプラゾール・半減期65時間・脂溶性薬剤・結合力は強く、ドーパミン・セロトニンに対する作用がある。

《知的障害に使用する》 12mg以上ではアカシジア・手のふるえが出現するが、36mgなら健常者に使用しても副作用のない薬剤である。知的障害患者の情緒面の安定化に少し有用で、特に多飲水・タバコ要求・食指亢進がある患者には良いことが多い。有効率は1020%程度と他覚はないが、上手くいけば空腹感・イライラのしやすさ・落ち着きのなさが若干ましになる。

《統合失調症に使用する》 統合失調症には500~600mgまで増やすと効果がでてくる。副作用にはねむけを生じやすく、起床時のねむけや呂律不良が残らないように注意しながら、50mgから始めて1~2週間ほどで500~600mgまで増やしていく。力価はリスパダール1~2mg程度と幻覚妄想の改善はあまり期待できないが、頑固な不眠を改善すること、感情的に穏やかな状態になることはある程度期待できる薬剤である。経験的には幻覚妄想に対する有効率は10~20%程度にとどまり、再発率は1年(80→)40~50%ほどあり、非力であることは否めない。統合失調症に対してセロクエルを使用する際には、リスパダールやセレネースを少量は併用した方が無難である。
添付文書上の投与回数は1日2~3回、投与量に関しては1日50~75mgから始めて750mgまで増やすことができる。治験だと統合失調症に対する有効率は42%であり、副作用に関しては、不眠19%・不安17%・ねむけ14%・だるさ10%・肝障害CK高値8%・プロラクチン上昇6%があった。(←アカシジア・手のふるえ、口渇便秘、肝障害CK高値、高プロラクチン血症はプラセボと同等であり非常に少ない。) これ以外では、体重増加・高脂血症・糖尿病の副作用があり、体重増加(データ上は半年2.6kg)は開始直後から、糖尿病・高脂血症は開始後1~2か月して生じる傾向がある。糖尿病になったことのある患者、意識障害のある患者、ボスミンなどエピネフリンとの併用は禁忌である。ほか、過量投与では過鎮静(=過剰なねむけ)だけでなく、頻脈・起立性低血圧が生じるなど心臓作用が少しあり、禁忌ではないが心疾患患者に使うことは少ない。薬理学上は成分名クエチアピン、半減期4時間、構造的にはベンゾジアセピン系薬剤に類似している。ドーパミン・セロトニン(幻覚妄想・手のふるえ・高プロラクチンに関連)以外に、ヒスタミン(ねむけ・食欲に関連)・アドレナリン(不安緊張・起立性低血圧に関連)に対する作用がある。


《躁状態に使用する》 米国では躁状態とうつ状態の両方に適応があり、日本でも適応こそないものの500~600mgで躁状態に使用する。副作用は少なく、身体面の衰えが目立ち副作用の出やすい患者には第一選択となるが、躁状態に対する力価はデパケン・テグレトール・リチウム・ジプレキサ・ロドピン・ヒルナミン等と比べはっきりと見劣りする。外来通院レベルの軽い躁状態には有効であるが、入院が必要な程度の躁状態には無効であることも多い。


《うつ状態に使用する》 頑固な不眠と気分の不調を合併する疾患、人格障害や薬物依存や認知症や単なる不眠に使う。分量としては25mg前後(12.5~50mg)で十分であり、起床時にねむけが残らないように分量を調節すれば、身体面の衰えが目立つ高齢者等にも安全に使える薬剤であり、この分量だと体重増加・糖尿病・高脂血症の心配をする必要もない。ただ、統合失調症でない患者に100mg以上を使用すると、過剰なねむけやせん妄を生じてかえって病状悪くすることが少なくないのでその点は注意すること。経験的な有効率は50%程度と高く、まずは直後から不眠の改善が、1週間ほどして落ち着かない気分・憂うつ感・不定愁訴・頑固易怒にも改善を認める事が多い。統合失調症薬剤治療薬剤の中ではセロクエル・ドグマチール・ヒルナミン・ルーラン・ピーゼットシー・エビリファイなどがうつ状態に使用できる。


《セロクエル(25)1T飲んだ人の日記》 容易には崩壊しないが噛み潰すとピリピリと苦味のある味がして、おまけに舌がしびれる。テトラミドやピレチアと同じ味がする。噛み潰すと10分ほどして軽いねむけを生じ少しまぶたが重たくなる。起きておこうと思えば起きておけるが、横になれば寝れるかな程度のねむけであり、ねむけの持続時間は1~2時間ほどである。ふらつきはねむけに伴うわずかなものはあるがほとんど感じない。内服直後にイライラ・落ち着かない気分を生じることもない。入眠はスムーズであり、中途覚醒3回と中途覚醒に改善はなく、睡眠時間は9時間で睡眠時間の延長もない。起きたときの気分はスッキリしており、翌日のねむけ・ふらつきに関しては、気になるほどのものはなかった。

《セロクエル(100)1T飲んだ人の日記》 噛み潰さずに内服すると30分後から軽いねむけを生じ、35分後には体を動かすのが嫌になる程度のねむけとなる。生じるねむけは強力であり脱力感を伴うが、ふらつきはさほど感じない。ただ、ねむいのに寝れずに少しイライラ・落ち着かない気分を生じる。(←睡眠薬過量投与でよくある症状) 薬剤過量の影響もあり入眠は少しスムーズでなかった。中途覚醒2回と改善はなく、中途覚醒時のふらつき・ねむけは感じなかった。睡眠時間は13時間であり、睡眠時間の延長は4~5時間と著明である。翌日起床時のねむけ・ふらつきはなく気分は悪くないが、日中は何となく物事に集中しにくく、ものが少しぼやけて見えにくいことがあった。また、翌日夜間は反動で4~5時間ほどしか寝れなかった。


★セロクエル・エビリファイ・ルーラン・ロナセン★
手のふるえ・口渇便秘・体重増加・無月経などの副作用は少ないが、幻覚妄想を改善する力もリスパダール2mg程度と弱い。幻覚妄想にはあまり有効でなく、病状悪化傾向の際や重症度の高い患者にはパワー不足であるが、漠然とした不安感や落ち着かない気分、頑固や易怒には有効である。また、急な増量・急な減量を行っても離脱等の不都合を生じることは少なく、少量であれば統合失調症以外の患者にも使用できるといった特徴がある。


パワー的に弱い薬剤であり幻覚妄想や病状悪化には対応できないが、もとから幻覚妄想がほとんどないような軽症患者、幻覚妄想があってもリスパダール4mg以下やジプレキサ20mg以下で良好な状態を維持できる軽症患者であれば、セロクエル・エビリファイ・ルーラン・ロナセンを選択すると良い。ただ、有効であれば1週間以内に何らかの改善が見られることが多いので、1~2週間みて改善がなければ中止すること。

高齢認知症患者・重症統合失調症患者などは理解力・判断力の重度障害のために、無防備に転倒・受傷を繰り返すことがある。転倒・受傷を防止する方法は、薬剤減量と拘束が中心となる。


薬剤調整はねむけ・手のふるえを生じる薬剤の減量が非常に重要であり、特に夜間にねむそうな様子があるか、転倒を繰り返すようなら薬剤減量・中止を必ず行うこと。精神科領域だとリスパダールやセレネース、デパスやロヒプノール、デパケンやテグレトール、ヒルナミンやベゲタミンといった薬剤はハイリスクであり、積極的に減量を考慮する。また、シンメトレル・サアミオン・アキネトン・マドパー等のパーキンソン病治療薬は思ったほど効果がなく、ボナロン・フォサマックなど骨粗鬆症治療薬は内服後の安静指示が守れない患者には禁忌であり、これらが適応となる状況は意外に限られる。そのため、夜間に徘徊する患者、転倒防止の注意を払えない患者など特に薬剤過量がないにもかかわらず転倒を繰り返す場合には、薬剤調整よりは拘束を必要とすることが多い。拘束は終日必要なこともあれば、夜間のみで十分なこともある。


転倒受傷の内容は打撲・裂傷・骨折が多く、打撲であれば局所の圧迫・冷却を、裂傷であれば圧迫とSSテープ固定(必要であれば縫合処置)を、骨折であれば安静保持・NSAIDs処方と数日以内の整形外科病院受診を指示する。


裂傷に対してSSテープや縫合処置を行った際には1週間程度は創部の汚染や発赤・腫脹の有無を1日1回確認すること。感染徴候がなければ、消毒等は不要でありガーゼ交換のみを行う。通常は1週間、糖尿病等があれば2週間ほどでテープの除去・抜糸をする。あと、糖尿病のある患者、ステロイド内服中の患者、浮腫傾向や蜂窩織炎の既往がある患者には、受傷・縫合処置の際に抗生剤を処方しておく。抗生剤は「フロモックス(100)3T/1日3回×4日分」「セフゾン(100)3T/1日3回×4日分」「ミノペン(100)1T/1日1回×4日分」など何でも良い。


骨折の場合はひどく腫脹するので、レントゲンを撮らなくても分かることが多い。痛み止めはあったほうがよいが、高齢者では胃潰瘍のリスクは案外高く、ロキソニンを処方する場合にはタケプロンの併用を(ムコスタやセルベックスは無意味、サイトテックは置いてない病院が多い)、そうでなければカロナールの処方にとどめるのが無難である。また、受傷してからあまり早くに診察すると、止血が完了していなかったり腫脹がはっきりしなかったりするので、受傷直後は圧迫止血の口頭指示だけして診察は10~20分後にするのが誤診せずにすむように思う。