「素敵。すごく文学的ですね。でも、沢口さんは嫌いなんですね、自分の名前」
「信じないかもしれないけど、好きだよ。ただ、恥ずかしい」
僕は彼女に嘘はつけないようだ。
これまで人には名前はコンプレックスだと話してきた。
その発言を、周りが求めている気がしていたからだ。
けれど、真実は今彼女に言った通りだ。
愛情を美しいと言い切る両親に敬意を払っているし、それは僕に力を与えてくれる言葉であるから。
ただ、これも素直に言ったことだが、やはり気恥ずかしいのも事実だ。
今の時代、正面から愛を語るのはやはり恥ずかしい。
いや、この歳になったからだろう。
よくも悪くも、僕は大人になってしまったのだ。