136.


「逃げろ、か・・・勇敢だな・・・」
黒い影を見に纏った男は、窓の外の流太に向き直る。流太は後ずさったが、かろうじて踏みとどまる。
(ダメ!佐原君、逃げて!殺されちゃう!)
深紅の思いは言葉にならなかった。体は硬直し、座り込んだまま起き上がれないばかりか、今では声を発することもできない。
(いやっ!助けて!)
憂弥、と深紅は心の叫びをあげた。しかし、黒い影の男は流太の方へ歩み寄る。
「う・・・うわぁ・・・」
流太は怯えつつもその場で耐えている。少しでも時間を稼ぎ、深紅を逃がそうと考えていた。それは無意識ではあったが、確固たる流太の意志でもあった。
「勇敢だな・・・逃げないのか?」
黒い影の男は、砕け散った窓ガラスを挟んで流太と対峙する。
お前がブレイクマンか、と男は尋ねた。
「ブ・・・ブレイク・・・な、何だよ・・・それ?」
震える声で流太は聞き返す。
「質問を質問で返すな。お前かと聞いている。お前がブレイクマンか?」
俺がブレイクマンだ、と声が聞こえた。動けずにいる深紅を抱き起こし、タスクを纏った憂弥がそこに立っていた。