130.


深紅は言葉を失った。背後からの声に慄きつつも、腕の中の後輩に目を向ける。まだ温かいその体は、しかし力なく腕の中にあった。背中に回した深紅の手に、生暖かい液体が触れる。静かに床に横たわらせ、自分の手の平を眺めると、そこにはべったりと少女の流した血がついていた。
深紅は声にならない叫びをあげ、背後を振り返る。そこには粉塵に隠れ、シルエットしか見えなかったが確かに誰かが立っていた。
怪我はしたものの、何とか起き上がれる部員たちもその影に気づき悲鳴を上げる。一瞬にして、この惨事を引き起こしたのが立ちはだかる影の仕業だという共通認識がなされる。次に湧き起こる悲鳴。
深紅もまた、状況が把握できないまま悲鳴を上げていた。
「朝霧・・・深紅は、お前だな?」
黒い影はそう言った。