123.


その日、憂弥は流太と二人で下校した。深紅は部活で忙しそうだ。
「よ、ちょっと格技館見ていこうぜ」
流太の言う格技館とは剣道や柔道、空手などの格闘技専門の施設だ。今日は深紅の所属する剣道部が使用する日だった。体育館とは別の施設で、憂弥とシリウスの戦闘の被害を免れていた。
「いいよ、剣道なんか見たって面白くねぇぞ」
「剣道はどうでもいいよ。俺は深紅ちゃんが見たいの。凛々しいよなぁ。俺、密かにファンなんだよ、深紅ちゃんの」
流太は遠い目をしている。
「あんな凶暴な女のどこがいいんだ?」
流太の発言の真意が咄嗟には量れず、憂弥は疑問を口にした。
「お前、何言ってんの?スタイル良し、性格良し、成績良しの学園のナンバーワンアイドルだぞ」
「へ?深紅ってそんなに人気あんのか?」
全く持って初耳である。
「知らなかったのかよ?上にも下にも同級生にもファンクラブがあるらしいぞ。ただし一つだけ欠点が・・・」
「何だよ?欠点て・・・」
欠点だらけだろ、と憂弥はカルグチを叩く。
「お前にべた惚れ」
「ええ?!なんだそりゃ?!」
しかし、憂弥はまんざらでもない。
「端から見たら明らかだよ。深紅ちゃんはお前のことが好きなんだよ。だから気をつけろよ。お前を狙う男は多い」
「知るか!そんなこと」
そうなんだ、やっぱりと、憂弥は心の中で思った。
「ま、安心しろよ。お前が剣道で全国レベルだったことも有名だし、戦いを挑む馬鹿はいない」
「はぁ・・・あの深紅がアイドルねぇ」
「ま、俺もお前とやりあうつもりはないし、ホントに芸能人でも見るような感じだ。そんなわけで行くぞ、格技館」
「行ったって見えねぇだろ、面かぶってんだから」
「かぶりっぱなしじゃねぇだろ?」
「そりゃまぁ、そうだけど・・・」
「じゃ、行こう」
流太がこんなにミーハーだったことをはじめて知った憂弥だった。