111.
シリウスの驚愕もうなづけるものだった。憂弥はよろよろと立ち上がったが、かなりの血が今も胸から溢れている。しかし憂弥は剣を握る手に力を込め「そう簡単にはくたばれないんでね……」
「馬鹿な……本当に貴様は人間か!?」
「冗談じゃ……ねぇよ。失礼な事言うない」
「いいだろう。今度こそ貴様を地獄に送ってやる」
シリウスは再び鞭を抜くと拳から光線で威嚇し、同時に高く飛び上がった。憂弥はおぼつかない足どりで地を蹴ると、シリウスを空中で迎え討った。
憂弥は電流を受けないよう、剣を交えず攻撃をかわすと、大げさに上段に構えた。二人は空中で一瞬制止し、憂弥の叫びと共にその静寂は破れた。憂弥は上段からゆっくりと、非常にゆっくりと剣を振り下ろした。まるで受け止めろと言わんばかりに。
シリウスはここぞとばかりに、鞭に流れる電流を最大限まで上げ、憂弥の剣を受け止めた、かに見えた。
しかし、次の瞬間、シリウスの体は頭からまっぷたつに切り裂かれていた。何が起こったのか。憂弥の振り下ろした剣は、確かにシリウスによって受け止められたはずだった。しかし憂弥の攻撃はシリウスの鞭をすり抜け、見事に敵を切り裂いていた。
「何とか成功したか……」
憂弥はそれだけ呟くと意識を失い落下した。
「おっとぉ」
コールとロックがそれを何とか受け止め、近くの大木に寄り掛からせるように寝かせた。
「息はある。たいしたもんだ」
コールは憂弥を眺めるとロックに向けて肩をすくめた。
「しかし、さっきのは何だったんだ。確かにシリウスは憂弥の剣を受け止めたように見えたが……」
「わからん。とにかくこの男、生命力一つをとってもかなりのものだ。もう傷口もふさがり始めている」
「型破りな男だ。常人ならとうに死んでる」
「ロックよ、どう思う。この男はエル・フィリオンを倒せるだろうか?」
ロックは少し考えると「今のままなら、まず無理だろう。しかし、こいつは成長する。それは確かだ。加えて俺達がいる」
コールは答える。
「この男一人に背負わせるには荷が重いか」
「しかし、期待はしている。この男なら、サラマンダーを越えられるかも知れん」
コールは再び憂弥を見ると「ああ」と言った。