106.


「ものすごいスピードだな!」
前方を飛ぶコールに置いて行かれない様、神経を集中させつつも、憂弥はロックに声をかけた。
「ああ、なかなかすばしっこいんですよ、コールは。瞬発力ではリックには敵いませんが、こうした長距離を移動するなら彼が一番速い」
「そうか、あんた達はリックの仲間なんだよな。俺、混乱してて状況がイマイチつかめてないんだ」
「無理ありませんよ。僕があなたでも一緒でしょう」
ロックの声は穏やかだ。とても後方から敵が迫っている状況とは思えない。
「おい!あの辺でいいか?!」
コールが指差す方向には、広大な森林があった。ロックも憂弥も無言のまま、その森林を目指して降下していった。
おそらく、富士山麓の樹海だろう。世界的にも珍しいシンメトリーの霊峰が、薄闇の中にそびえていた。