73.
ひとしきり笑い合っていたが、シャドウが不意にまじめ顔で「紫堂憂弥・・・色々と助かった。まずは礼を言う」
「そんな、木にからまってまともなことを言われても・・・」
憂弥はシャドウの礼を軽く流す。
「うるさい!下手に出てりゃぁ付け上りやがって!大体お前は何なんだ?!ぜんぜん戦う気、なかったじゃなねぇか?!俺たちの世界だけの問題じゃねぇんだぞ!」
憤るシャドウは、未だに木にからまったままだ。リックが手を貸し、ようやくシャドウは自由の身になった。憂弥は頭をかきながらそれを見守り「わっかてるよ」
「いいや、お前はわかってない!」
どうやらシャドウの怒りは収まらないようだ。
憂弥はシャドウの説教をさえぎり「二つの世界の運命がかかってるんだろ?」
その口調は落ち着いていて、何らかの覚悟を感じさせた。
「お前・・・」
シャドウはそうつぶやくと沈黙する。彼にも憂弥の覚悟が伝わったようだ。
「だけどな、やっぱりそんなのピンと来ないね!」
「何?!」
憂弥の突然の発言に、シャドウだけでなくリックも声をそろえた。
憂弥は二人を見回し「いや、今更逃げ出す気はないけどさ、やっぱり俺は世界のためには戦えない」
「何言ってんだ?!」
憂弥の話を待たず、シャドウが問い詰めようとする。
「聞けよ。世界のためなんて、なんだか話がでかすぎるんだよ」
憂弥は手のひらでシャドウを制し「ただ、俺は俺の身近な人間の平和は守りたい。レヴィ・ストーンを守ることがそれに繋がるなら、俺はあんたたちと一緒に戦う」
「お前・・・」
憂弥の言葉に、シャドウたちは改めて覚悟を感じた。それは信じるに足る、憂弥の等身大の覚悟だった。
「但し、もしもそれが間違いだったら、俺とあんたたちは敵同士だ」
「わかった。俺たちを信じろ、紫堂憂弥」
憂弥の覚悟に、リックが応える。
「お前をヘル・ライナーズに歓迎する」
そして、憂弥に握手を求めながら「破壊者、ブレイクマン」
「何だそれ?」
リックの手を取り、憂弥が聞き返す。
「お前のことだよ。ブレークマンではなく、ブレイクマン。平たく言えば壊し屋だ。お前は常識やしきたり、敵も建物も、もしかしたら二つの世界もぶち壊すだろう」
「人聞きが悪いな」
「でも、似合ってるだろ?破壊者」
リックの言葉にシャドウが答える。
「ああ」
そして憂弥の手を握り「そういう呼び名があったほうがハッタリが利くんだ」
「何だよ。やっぱかっこわりぃよ」
文句を言いつつも、憂弥はシャドウとも握手を交わす。その表情は満更でもなさそうだった。