72.
ついさっき飛び込んだときも、憂弥にはそれらしき穴など見えなかったが、今もリック達が見つめる地点に憂弥はそれらしき跡すらも見つけられなかった。
「どうする?」
「どうするって言ったって……」
リックも困惑したまま言葉を失ってしまった。その時、「どうするもこうするもねぇだろ?」
二人の足元、銀杏の大木の木々の間から、その声は確かに聞こえた。
「シャドウ?シャドウか?!」
リックは喚起の声を上げ、大木を見おろした。
「塞がっちまったものはしょうがねぇ。考えるだけ無駄さ」
未だその姿は見えないが、確かにシャドウの声はそのしげみから聞こえる。二人は高度を落とし、何とかシャドウの姿をとらえようとした。
「とにかく、次元間の行き来は、これで不可能になった訳だ。いいことじゃねぇか。これでエル・フィリオンは何もできなくなった事だし……ま、問題と言えば、俺等がウォーリピアに戻れないってことだけだな」
リックはシャドウの生存を確信し、興奮しながらもしげみをかき分けている。憂弥もその後を追い、銀杏の枝を分けて探した。
「ま、ホントはもっとかっこ良く登場したかったんだけどな……」
シャドウがそう言ったとき、ようやく二人は彼を発見した。
「ユイナルの野郎はしとめたんだが、あの爆発で気を失っちまってよ……」
そう言ったシャドウは、大木の枝に絡まり、捕らわれたように身動きがとれない状態だった。
誰ともなしに笑い始める。その笑いは仲間の無事を確認した安堵からの、自然な笑いだった。