64.
「追うぞ」
「シャドウ?」
リックは心配そうにシャドウを見つめた。
「心配するな、リック。行ける!ユイナルだ。奴を、この手で!!」
シャドウは拳を握りしめると、ユイナルを追って飛び上がった。憂弥達も、互いにうなずき合うと、シャドウの後について飛び立った。
ユイナルの行方を、タスクを通して追いながら、シャドウは振り返った。
「紫堂憂弥……」
「ん?」
「ありがとう……」
シャドウはそう言うと、「お前のおかげだ。俺は危うく、自分にとって一番大事なものを、この手で壊してしまうところだった。結果的に、俺はそれを失ってしまったが、お前のおかげで、後悔はしないで済みそうだ……」
「シャドウ、急ごうぜ」
答に窮する憂弥を救うように、リックが明るく言った。
「OK!」
シャドウもまた、強がりではあったが、明るく言うと、再び先頭に立った。
しばらく、飛んでいると、「どうやらユイナルは、ウォーリピアに逃げるらしいな……」と、リックが呟いた。
「どういう事だ?」
憂弥が聞くと、「奴が向かっているのは、サラマンダーの死んだあの寺のある方角だ。あそこには次元の壁を抜ける穴がある」
「あぁ?!何だって?あの寺にあったのか?」
「ああ、俺達もあそこからこの世界にやって来た。あの寺の、銀杏の大木の上空に、次元の穴はある」
リックの言葉を聞くと、一同は加速し、目的地を寺に定めた。
「見えた!!」
先頭を行くシャドウが指さした先には、住宅街に囲まれた寺の、あの大木が、他の何よりも高く伸びていた。
「このまま飛び込むぞ!!」
リックの言葉に、憂弥は驚きの声を上げ、
「飛び込むったって何もないじゃないか?」
「いいから、ついて来い!!」
シャドウはそう叫び、空中のある一点をめがけ加速すると、丁度銀杏の木の上空5~6メートルの所で、忽然と姿を消した。リックも後を追い、同じように消えていった。憂弥は戸惑い、「マジかよ?本当に行けるのか?……ええい、いっちまえ!!」と、半ばやけくそで後を追った。