45.

翌朝、いつも通りの一日が始まる。今日も深紅が部屋のドアを叩き、その音で憂弥は目覚める。つかの間、取り戻した日常は充分すぎるほど憂弥のすさんだ気持ちを癒した。

いつも通りの深紅の小言が、なんとも言えず心地よかった。自然と表情が緩む。

憂弥は深紅に急かされ、慌しく支度をする。送り出す諒子にいってきますと元気に応え、深紅は憂弥の腕を取り、引きずるように歩き出した。

憂弥はあくびをしながらも、いつもと変わらないやり取りを心の底から喜んでいた。

「ちょっと聞いてるの?まだ寝ぼけてんじゃない?」

「起きてるよ。お前元気だな?昨日ぶっ倒れたクセに」

「それ!それなのよ!何で倒れたんだろ?自分で言うのもなんだけど、頑丈よ、私」

「か弱い女の子ってかわいいよね」

うるさいと、深紅は憂弥の頭を小突く。

「はい」

素直に従おうと、憂弥はこれまでの経験から判断した。

「なんだか前後の記憶も曖昧なのよ。帰り道で倒れたのよね?やっぱり夢だったのかなぁ?」

「昨日言ってた全身白いコスチュームの変態の話か?」

「うん。なんか妙にリアルなのよ。その人に後ろから捕まえられて・・・すうっと気が遠くなって・・・」

!と、深紅は声をあげる。

「何?何だ?」

「かっこいい外人さんを見たの!」

「ああん?」

「金髪のかっこいい外人さんが助けてくれたのよ」

(おいおい、結構覚えてるよこいつ)

「な、なかなか破天荒な夢だな・・・」

誤魔化すしかないと、憂弥は決意。

「夢だったのかなぁ・・・やっぱり・・・」

「そうだろ?だって俺ずっと見てたもん」

「むう…憂弥に寝顔を見られるとは・・・」

ややうつむいた深紅の耳が赤く染まる。憂弥はそれに気づき、自分もまた動揺する。

「お前だって俺の寝顔何度も見てるじゃん」

「あんたが朝起きないからでしょ?!」

かけがえのない日常があまりにもまぶしい。