44.
「俺が気を失ってる間に、何で奪わなかった?」
薄暗い廃工場で、憂弥は尋ねた。
「俺にソノ気はないぞ」
「唇の話じゃない!」
「じゃ、何だ?!」
リックは真剣な表情だ。
「石さ・・・レヴィ・ストーン」
「ああ・・・あの石はエル・フィリオンの手に落ちない限りは、誰が持っていても大した問題じゃない」
「どういうことだ?」
リックもまた、レヴィ・ストーン奪回を目論んでいると考えていた憂弥は戸惑いを隠せない。
「持っている人間が攻撃を受けるだけだからだ。欲しがっているのはエル・フィリオンだけってこと」
「あんた達はいらないって言うのか?」
やれやれ、とリックは首を振る。
「サラマンダーがレヴィ・ストーンを持ち出してすぐ、ライナー・フル様は追っ手を差し向けてそれを取り返そうとした。しかし、ライナー・フル様の力が一時的に弱まった隙を突いて女神カトラスがライナー・フル様を封印してしまった」
「さっきも言ってたな。じゃぁ、ライナー・フル亡き今、あんたたちの世界ではエル・フィリオンの天下って訳だ」
「ああ、しかし二つのレヴィ・ストーンが合わさった時、時空の封印が解かれるようになっている。女神カトラスがそう定めた」
「じゃ、ライナー・フル復活の為には俺の持っている石とエル・フィリオンの二つの石が必要って訳だ」
「ああ、しかし神の力は絶大だ。到底俺たち人間が敵うものではない。だから・・・ライナー・フル様が封印されてしまった時点で、俺たちは負けたんだ。今となってはお前の石を奪ったところで、主の復活は不可能だ。石を持ってるだけでエル・フィリオンに狙われる。お前には悪いが、俺はそんなもの要らない」
「俺だって要らないぞ。冗談じゃない」
「じゃ、捨てるか?」
沈黙。
「壊せないのか?」
「無理だな。神を超える力が必要だ」
「持ってねぇよ」
憂弥の蹴った石が乾いた音を立てた。