43.
「目・・・覚めたか?」
遡ってその数10分前。廃工場で再び意識を取り戻した憂弥は辺りを見回した。憂弥のタスクはすでに解除され、制服は粉塵で薄汚れていた。ほこりを払いながら脇を見ると、そこにリックの姿があった。
「勝ったのか?」
「ああ」
すでに沈み始めた夕日を見ながら、リックは素っ気無かった。
「どうやって?」
「説明したろ?ためたパワーを全部スピードに使った。奴は防御するまもなく・・・って感じだな」
「浮かないな・・・」
「そう見えるか?」
「ああ、戦いに勝ったのにぜんぜん嬉しそうじゃない」
リックはしばらく口を開かなかった。
遠くで瓦礫が崩れる音がした。カッシェルの無差別な攻撃で崩れかかった建物が、この沈黙に耐え切れなくなって崩れたのだろう。
「戦いに勝つってことは、相手を殺すことだ。素直に喜べるもんじゃない」
瓦解する音をきっかけにつぶやいたリックの言葉に、憂弥はこみ上げるものを感じていた。
「戦いが本業なんだろ?あんた達は・・・」
多少皮肉るように憂弥は問う。リックの答えは「人によりけりさ。少なくとも、俺はいつまで経っても慣れないね」
憂弥はその言葉に一方的な共感を覚えた。
「俺も・・・きっと慣れることはないんだろうな・・・」
「慣れる必要はないと、言ってくれた人がいるんだ・・・」
「・・・・・・」
「それが・・・サラマンダー・ギル・ブレークマンだ」
「あいつが?」
「ああ・・・その時、俺は救われた気がした。だから、多分お前にも必要な言葉だと思うんだ」
「・・・俺にも?」
「そう、だから俺がお前に言ってやるよ。『慣れる必要なんかないんだ』」
「・・・サンキュ」
夕日は瓦礫の果てに沈んでいく。