42.

「目・・・覚めたか?」

憂弥の寝室で、ようやく意識を取り戻した深紅は状況をつかめない様子で戸惑っている。

ここは?と、問いかけとも独り言とも取れる小さな声で深紅はつぶやいた。

「見ての通り、俺の部屋。びっくりしたぞ、いきなり気を失うから・・・」

憂弥の表情は複雑だ。実際のところ、今日の出来事のどこまでを夢として納得させることができるか、憂弥はいまだ手探りだった。

「なんで、私・・・ここに?」

「帰り道で倒れたんだ。覚えてないのか?」

憂弥はそれを望んでいた。正直なところ、今の状況を自分自身が受け入れられずにいる。事情を知らない深紅は混乱するだけだろう。何より、自分の味わった生死をかけた戦いに、深紅を巻き込むことを憂弥は望んでいない。深紅がこのまま、カッシェルとの遭遇を夢として片付けてくれることを願っていた。

「なんだか白いコスチュームを着た人に首を絞められて・・・あの人・・・憂弥の知り合い?」

「な・・・何言ってんの?お前」

「え?」

「何の話だ?その、白いコスチュームの人って?」

「え?憂弥、覚えてないの?」

「何のことだ?お前、夢でも見たんじゃないの?」

「夢?・・・う、うん・・・そうかなぁ・・・」

「帰り道で突然倒れて、苦労してここまで運んできたんだぜ。ただ寝てるだけみたいだから医者とかは呼んでないけど。病院行くか?まだ意識が朦朧としてるんじゃないのか?」

「・・・」

深紅は記憶を辿っているようだ。自分の見たものが現実か夢なのか、自信が持てずにいるらしい。

「部活で疲れてるんじゃないか?突然倒れて夢でも見たんだろ」

「そう・・・そうかなぁ?」

「そうだろ、きっと。ずっと見てたけど、そんなおかしな格好の奴は現れんかったぞ」

「おかしな格好って・・・ま、確かに・・・・・・!」

「ん?どした?」

「寝顔見たわね!?」

「え?!いや、そりゃ見たけど・・・」

「▲@◇☆○▼※!」

真っ赤になった深紅は声にならない叫びをあげ、憂弥をひっぱたくと部屋を出て行った。

「痛てててて・・・」

深紅に叩かれた頬をさすりながら、まぁ、これでいいかと憂弥は思った。