41.
カッシェルは二人を探し、執拗に廃屋を破壊し続けていた。粉塵が立ちこめ視界を遮っている。物音にカッシェルが振り向くと、瓦解した建物の残骸を踏み越え、黒いタスクを纏った男が現れた。
「カッシェル!」
「?!ずいぶん臆病だな、紫堂憂弥。もう隠れなくてもいいのか?」
徐々に立ち込めていた粉塵が晴れ、お互いの姿が見えるようになってきた。
「ああ、俺も逃げ回るのは趣味じゃない。これでも剣道・・・知らねぇか。剣術の嗜みはあるんだ。堂々と勝負してやる」
憂弥は左の二の腕から光の剣を引き抜き、中段に構えた。
「ほう…剣道か?知っているぞ。子供の遊びだな・・・」
「何だと?」
「怒ったのか?しかし、仕方ないだろう?木の棒で命をかけない切り合いなど、所詮はお遊び。常に生死をかけた真剣で戦っていたレヴィアにとっては・・・ぬるいわ!!」
叫ぶと同時にカッシェルも背中から剣を抜き、憂弥に飛び掛る。振り下ろされた剣を憂弥はかろうじて受け止めた。
「くっ!?」
「どうした?剣術には自信があるんだろう?受けてばかりでは真空のカッシェルには勝てんぞ!」
カッシェルは切り付けた剣に力を込める。
「くそっ!」
憂弥はカッシェルの剣を左に受け流し、間合いを取る。しかし、カッシェルの攻撃は止むことなく繰り返された。矢継ぎ早に繰り出される攻撃を、憂弥は防ぐのが精一杯という様子だ。実際、真剣での切り合いにおいては圧倒的に経験が足りない。意識してはいなかったが、憂弥は明らかに萎縮していた。
(ダメだ!意識が・・・リック・・・まだか?)
カッシェルの至近距離からの猛攻を受け、憂弥は意識が朦朧としてきた。そこに声が響く。
「待たせたな、憂弥!」
かろうじて残った意識の中、憂弥が見たのは青白い光を身に纏ったリック・ロシアン・ブルーの姿だった。
「遅ぇ・・・よ・・・」
憂弥はそれだけ言うと混濁の世界に身をゆだねた。崩れるように倒れる憂弥にリックは「後は任せろ!」
カッシェルは倒れた憂弥より、青白い光を放つリックから目を離せない。向き直り、リックに全神経を集中させた。しかし、「何?!」
一瞬、もしかしたら瞬きをしたのかもしれない。そこにいたはずのリックを、カッシェルは完全に見失った。次にリックの姿を捉えたとき、リックからはすでに光は出ておらず、代わりに自分の腹部から鮮血が溢れていた。カッシェルは事態を把握すらできず、そのまま意識を失っていった。
「青の疾風、リック・ロシアン・ブルーだ。ヘル・ライナーズをなめるな」
カッシェルの体が砕けて消えていった。