40.

「何?エル・フィリオンが……」

「そう。ブレークマンがレヴィ・ストーンを奪ったことにより、一時的に力を失ったライナー・フル様は、時の女神に封印されてしまった。そして、ライナー・フル様亡き今、ウォーリピアを統一したエル・フィリオンは、三次元攻略をもくろんでいる」

「何だって?!」

ある程度予測はしていた。しかし、現実に道の存在が、自分の住む世界を侵略しようとするなど、空想の世界の話だと思っていた。しかし現実に、目の前に異形の戦士がいる。そしてまた、自分も異形の甲冑を纏い、こうして戦っている。憂弥は改めてそれを実感し、驚愕した。

「しかし、神であるエル・フィリオンは人間とは違い、レヴィ・ストーンの力無しには次元の壁を越えられないんだ」

「どうして?」

「存在が希薄なのさ。神様ってのはそういうものだろ?」

「よくわからん」

そうは言うものの、概念としてしか神というものを知らない憂弥にとっては妙に頷ける表現だった。いると感じることはあっても見たことがない。存在自体が希薄とはうまい言い方かもしれない。

「とにかく、神はそのままでは実体がないようなものだと考えてくれ。実体がなければ次元の壁は越えられない。その為にレヴィ・ストーンの力が必要なのさ」

「……一個持ってるだろが?」

「確かに、奴もレヴィ・ストーンを持っているが、一つでは力不足だ。二つ揃えなければ、時空の壁は越えられない。だからお前を狙っている。お前がサラマンダーから受け取ったレヴィ・ストーンを」

レヴィ・ストーンというものがそもそも理解できないが、とりあえず保留し「エル・フィリオンが三次元を狙ってる?サラマンダーの言っていたのはこの事だったのか。だから俺に、この世界の未来も関係していると……」

おそらくそうだろうと、リックは言った。そして、「主が封印され、俺たちは負けた。今こうして戦っている意味はない。ただ、俺を突き動かすものがあるんだ。エル・フィリオンを野放しにしてはならないと、俺の中でライナー・フル様が繰り返している気がするんだ」

「言ってることは立派だけど、だからと言って信用はできないな。あんた達はサラマンダーを殺した」

「それは仕方のない事だ。サラマンダーは罪を犯したのだから」

「罪?」

タスクに顔を覆われてはいるが、リックは苦渋の表情だろう。なぜか憂弥はそう感じた。

「わかってるだろ?ライナー・フル様のレヴィ・ストーンを盗んだ。三次元との交流を邪魔したのだ」

憂弥はアデプトも同じ様な事を言っていたのを思い出した。

「なぜサラマンダーはレヴィ・ストーンを盗んだんだ?俺にはあの男が、何の考えもなしに罪を犯すような奴とは思えなかった」

「お前は随分とサラマンダーに味方するが、彼についてどれ程を知っている?俺もサラマンダーの人柄は知っている。確かに立派な男だった。ウォーリピア最高のレヴィアである彼は、その強さと同じ位正しい男だった。しかし、だからと言って道を誤らないとは言い切れまい」

それは確かにそうだけどと、憂弥は反論を試みる。しかし、明確な理由は思い浮かばない。

「何か理由があったはずだ」

「おおかた戦いに嫌気がさしたんだろう。二つのレヴィ・ストーンを巡る二人の神の争いは、あまりにも長過ぎた。戦いを終わらせるために、彼はそういう手段をとったんだろう」

「本当にそれだけだろうか……?」

「まぁ、実際のところはわからん。サラマンダーは常に正しく、俺たちのリーダーであり憧れだった。それは罪を犯した後も変わらんよ。少なくとも俺の中では。お前と同様、俺も状況が把握できていないんだ。だから今は、自分の中の声を信じる。それが俺の正義だ」

「・・・・・・わかった。自分の正義を押し付けないところが信用できる」

今は考えるのをやめようと、憂弥は決断した。

「じゃぁ、そろそろ行こうか?」

「ああ、行こう」