34.
廃工場から飛び立った憂弥は、深紅をどこに連れて行こうか考えていた。気絶したまま、まだ目を覚ましてはいない。
(どうする?とりあえず俺の部屋に寝かせて・・・目が覚めたらパニックだろうな。全部夢ってことで押し通すか・・・)
憂弥は自宅へと急いだ。幸いにも紫堂家は閑静な住宅街の中にある。付近まではかなり上空を飛行し、自宅の真上で下降する。誰の目にも触れず、憂弥は2階にある自室のベットに深紅を横たえた。
(あ、鞄・・・取ってこなきゃ)
憂弥はタスクを解除し、カッシェルと最初に遭遇した場所へ走った。いたずらに飛び回ることが危険に思えたからだった。憂弥は道端に落ちている鞄を拾うと、自宅にとって帰り、再び2階の窓から飛び立った。あの、廃工場を目指して。
(やつら、まだ戦っているだろうか?あのリックって奴、明らかにカッシェルよりも強そうだったな)
助けてもらった恩義からか、憂弥はリックの身を案じていた。
(あいつには、聞きたいこともあるしな)
憂弥はいま自分の周りで起こっていることを把握したかった。サラマンダーの死、二つの世界と二人の神。リックの目的。
(そもそも、何であいつはレヴィ・ストーンを俺に返したんだ?あいつの目的って何だ?)
次々と去来する疑問に、何一つ回答を見出せないまま、憂弥は飛び続けた。
やがて、あの廃工場が見えてきた
(・・・静かだな・・・戦闘は終わったのか?)
憂弥は慎重に、少し離れたところに着地すると、先ほどの場所まで歩くことにした。
すると、廃屋の向こうからカッシェルの声がする。物陰から様子をうかがうと「どうした?青の疾風もかたなしだな」
(?!)
そこには四肢から血を流し蹲るリックと、勝ち誇るカッシェルの姿があった。
(何だ?どうなってるんだ?あのリックって奴、相当なスピードだったのに、完全に形勢逆転じゃないか)
「どうした?リック。まさに手も足もでないか?」
「お・・・お前・・・何をした?」
「ふっふっふ・・・タネは明かせんなぁ・・・ま、貴様がまんまと罠にはまっただけさ。この真空のカッシェルのな!」
そう言うと、カッシェルは剣を高々と掲げ一気にリックに振り下ろす。
(?!)