33.
「く・・・いったい何が・・・?」
カッシェルは頭を振りながら起き上がった。
「鈍いんで、失敬したぞ」
リックの声が背後から聞こえる。カッシェルが辺りを見回すと、呆然とした顔の憂弥が立っていた。
「ここだよ、上だ」
再び聞こえたリックの声を受け、カッシェルも憂弥も上を見上げると、深紅を抱きかかえたリックが宙に浮いていた。よく見ると、リックは空いた手で宝石をもてあそんでいる。
「そ・・・それはレヴィア・ストーン?!」
カッシェルが驚きの声をあげる。無理もない、憂弥の投げ上げたレヴィ・ストーンに一瞬目をやった隙に、数メートル離れていたはずのリックに突き飛ばされ、人質の深紅を奪われた。その上、宙を舞っていたはずのレヴィ・ストーンまで易々と掴んでいる。カッシェルはリックの凄まじいスピードに驚愕していた。
「まさか・・・そんな馬鹿な・・・」
「何を驚いている?自分で言ってたじゃないか?青の疾風・・・この俺のスピードはウォーリピアでも5本の指に入る」
憂弥は驚きを隠せなかった。
(全く見えなかった。何かやるつもりだとは思った。だけど何も見えなかった・・・。それほどのスピード・・・)
呆然とする憂弥の隣に、リックが降り立つ。上手には深紅を抱えている。
「さぁ、紫堂憂弥よ。君の彼女は気を失っているだけだ。急いでこの場から離れるんだ!」
「え、あんた・・・」
「話している暇はない。その娘をかばいながらでは戦えない。すぐに逃げろ!」
「あ・・・ありがとう」
「どういたしまして・・・あ、それと・・・こいつも持って行け」
リックはそう言うとレヴィ・ストーンを憂弥に渡した。
「え?この石、あんたもこの石を奪いに来たんじゃないのか?あの、アデプトの仲間だろ?」
「理由はあとだ。早く行け!」
リックの叫びと共に「わかったよ!」と、憂弥は飛び立った。気を失った深紅を抱いて。