32.
「何とか奴の気を惹いてくれ。」
リックは小声で言うとタスクを纏った。
一瞬の激しい閃光とともに、リックの体をタスクが覆う。
リックのタスクは濃い青色で、全身が憂弥のタスクとは事なり、直線で構成されている。両手の拳と胸部に、青く輝く楕円の石がついている。
「ヘル・ライナーズ、ライトブリットno.5リック・ロシアン・ブルーだ」
「青の疾風、リック・ロシアン・ブルーか・・・しかし、何のつもりだ?なぜ紫堂憂弥からレヴィア・ストーンを奪おうとしない?」
「貴様のような雑魚が知ったことか?」
「く、またしても愚弄するか?」
タスクに隠れ表情はうかがえないが、明らかにカッシェルは我を忘れている。
「言っておくが、その娘に人質としての価値はないぞ。このリック・ロシアン・ブルーとは縁もゆかりもない女だ」
「何だと、この野郎!」
リックの言葉に憂弥が激しく反応する。しかし、リックは一瞥しただけだった。
「一応、名前くらいは聞いておく。せめてもの礼儀だ。名乗れよ」
憂弥も深紅も全く視界に入らないかのように、リックはカッシェルに対峙する。
(こいつ・・・何を考えてるんだ?まさかホントに深紅を見殺しにして戦うつもりなのか?)
「よかろう、俺の名はカッシェル・ポーン。クロスボーン・レヴィアスのナンバー29、真空のカッシェルだ。行くぞリック!」
「ちょっと待て!こいつが目的だろ?」
カッシェルの出鼻をくじいたのは憂弥だった。憂弥はポケットからレヴィア・ストーンを取り出すと高々と掲げた。
「こいつを渡す。だから深紅を離せ。あとはお前たち二人で勝手に奪い合えばいい」
「む、なんと言うことを・・・紫堂憂弥、それを渡してはならんと・・・」
リックは憂弥に背を向けたままつぶやく。
「お、そうか。渡す気になったか?お前はなかなか利口だぞ。さぁ、それをよこすんだ」
「深紅を離すのが先だ」
「ふん、交渉できる立場か?さっさと渡せ!」
そういうとカッシェルは深紅の首に回した手に力を込める。気を失っている深紅が「うっ」と苦しそうな声をあげた。
「わ、わかった。渡す。待ってくれ、深紅に手を出すな」
「紫堂憂弥、それを渡したらどうなるかわかっているんだろうな」
相変わらずカッシェルを睨んだまま、リックが問いかける。
「わかんねぇよ、そんなこと。カッシェル、受け取れ。ほらよっ!」
憂弥はそう言うと、レヴィア・ストーンを高々と投げ上げた。
「わ、馬鹿。どこに投げている!」
カッシェルがレヴィア・ストーンを見上げた一瞬だった。カッシェルの体は強い衝撃で弾き飛ばされ、横様に倒れた。一瞬何が起こったのか、当の本人にも憂弥にも理解できなかった。