24.
アデプトの目に光が増した。こころなしかその剣も少し長くなっている。
「冗談でしょ?」
憂弥が言うと同時にアデプトが切りつけてきた。しかし、憂弥の余裕とは裏腹に、その一撃はかわしきれるものではなかった。アデプトの振り下ろした剣は、憂弥の肩口をかすめ右肩の装甲がまるでガラス細工のように砕け散った。明らかにアデプトの剣は力を増していた。憂弥は激痛を感じ肩を見ると、かなりの量の出血だった。
「安心しろ。その程度の出血ならタスクの力でじきに治ってしまう。しかし、その傷が癒える頃にはまた次の傷が刻まれ、その傷が癒える頃にはまた次の傷が刻まれる。そうやって死んでいったよ。ブレークマンもな」
アデプトのスピードが増したのか、それとも憂弥が鈍ってしまったのか、次々と攻撃を受け、憂弥は体中いたるところに傷を負ってしまった。
「このままじゃやられる」
「そうさ。お前は死ぬんだよ。致命傷は与えないぞ。じわじわと殺してやる。惨たらしい屍をさらすがいい」
確かに、どれも急所をはずれた傷だ。最初に受けた傷は、アデプトの言う通りタスクの力でふさがっている。しかし、余りにも出血が多く憂弥の意識は朦朧としてきた。
「残念だったな。タスク本来の力を引き出せないまま、死んでいくがいい!」
「タスク本来の力……」
アデプトの最後の一言が勝敗を逆転した。憂弥の中で何かが弾け、今まで以上の力が徐々に引き出されていった。それは最後のあがきだったのかもしれない。とにかく憂弥が死を認識したとき、消えかかっていた闘争心に火がついてしまった。今までの受け身の体制から転じ、憂弥は相手を倒す事が生きる手段だと気づいた。瞬時に闘争心は頂点を極め、アデプトに対し正面から対峙したときは、今までとは違い右の目からも光が漏れていた。鋭い眼光は更に増し、アデプトはそのすさまじさに一瞬たじろいでしまった。
「ブレークマン……まさに熱風のブレークマン…」
憂弥は高々と剣を振り上げ、叫びと共に振り下ろした。その剣は十メートルほどの長さを持ち、アデプトと共に廃屋を一棟とらえた。アデプトは左の肩口から右脇へと切り裂かれ、同時に後ろの廃虚も瓦礫の山と化した。
「おそるべき破壊力……貴様は……全てを……破壊するのか……」
アデプトはそれだけ言うと、ブレークマンがそうであったように朽ちていき、そして消えた。