20.

憂弥はゆっくりとした足取りで物陰から身をさらす。銀色の甲冑の男、アデプトと対峙するために。

逃げ延びる算段はなかった。だが、やみくもであっても、戦って相手の隙をつけば活路は見出せるのではないかという、漠然とした考えはあった。

「アデプトとか言ったな。俺が相手になってやる。勝負だ」

とりあえずはそう言うと、憂弥は再び二の腕の剣を抜き、アデプトの方へ向けて構えた。二つの世界をまたにかける壮絶な戦いは、こうして始まった。

アデプトは当惑しつつもおおよそは事態を把握し、腰にある剣を抜いた。

「そうか、貴様ブレークマンからタスクを受け継いだな。なるほど、よく似てはいるが細かいところが少しずつ違うようだ。さすがはブレークマンの影。その実力もかなりのものかもしれんな。…よかろう、相手にとって不足はない。私の名はアデプト。ライトスピア隊no.25、フィルオン・アデプトだ。貴様の名は?」

「俺は、紫堂憂弥だ」

「よかろう。では紫堂憂弥よ、この閃光のアデプトが貴様に死を与えてやる。勝負!」

アデプトは背中から炎を吐き出すと宙に舞い上がり、そのまま憂弥に向けて切りつけた。憂弥は抜いた剣でそのままそれを受け止めると、体をかわし、同時に背中と足首から青い炎を吹き出させて飛び上がった。

「ついて来いアデプト。場所を変える」

すぐにアデプトも「逃がすか」と、後を追った。

「逃げてんじゃねぇよ、馬鹿。お前罰当たるぞ、あんなに墓壊して」

憂弥はそう言うと、広い場所を探し速度を上げた。

(とは言え、あわよくばこのまま逃げられんものか…?)

憂弥の考えとは裏腹に、アデプトも後を追い空を飛ぶ。

高速の追跡が始まった。

アデプトは何度か後ろから攻撃しようとしたが、しかし憂弥のスピードについて行くのでやっとだった。

(なんて速さだ!)

アデプトは驚きの色を隠せなかった。確かに自分の手で、ウォーリピア最強のレヴィアであるブレークマンを倒したが、ブレークマンはその前に二〇人にも及ぶ追っ手のレヴィアと戦って疲弊しきっていた。いずれもアデプトと肩を並べる実力の持ち主だ。今こうして、ブレークマンのタスクの能力の片鱗を真に受けると、その格の違いに愕然とするばかりだった。しかも目の前の敵は初めてタスクを纏ったばかりだ。それでも自分がやっとついて行けるかどうかという程のスピードで動ける。アデプトは自分の勝利に疑惑を感じ始めていた。