18.

憂弥は墓石の影に身を潜め考えていた。

(うまく逃げられるかどうか。いや、それは無理だな。あの鉄柵がネックだ。じゃぁ、どうする?戦うと言ってもなぁ。あぁ、どうすりゃいいんだ?!)

すると握り締めていた宝石がぼうっと輝き始めた。

(そう言やブレークマンが何か言ってたな。えっと、こっちの紫の方だっけかな。額にあててなんとかって……)

憂弥はとりあえず言葉の通りに宝石を額にあててみた。するとその宝石は淡い光を放ちながら憂弥の額に吸い込まれてしまった。

『憂弥よ……紫堂憂弥よ』

「な、なんだ。ブレークマンか?」

憂弥の頭の中に、サラマンダー・ギル・ブレークマンの声が直接響く。

『また会えてうれしく思う、憂弥よ。しかし、あと少しで本当の別れとなるのだ。だからその前に、お前に告げなければならない』

ブレークマンの声は続ける。

『我々の世界にはレヴィアと呼ばれる人間がいて、その者達は全て自分のタスクを持っている。たった今、お前の中に取り込まれた宝石は、そのタスク、云わば“甲冑”を呼び出す事ができる。今よりお前はレヴィアとなり、この世界に降りかかる災いをお前の力で振りはらわねばならない。身の危険を感じたらタスクをまとえ。お前だけの、そしてお前なりのタスクがその身を覆うだろう』

「何のことだ?何から何までチンプンカンプンだよ」

頭の中に響く声に、憂弥は声を出して問いかける。端から見たらかなり挙動不審だ。しかも、本人は何の事だか把握できず、必死の形相だ。人気のない墓地でよかった。

「タスク?って言ったよな。何なんだよ?タスクって」

『ああ、タスクだ。お前達の世界で言う甲冑の様な物だな。我々の世界では使命を帯びるときにタスクという甲冑をまとって出陣する。「使命」すなわち「タスク」というわけだ。そのためタスクを着用することを「タスクを帯びる」と表現することもある』

「そんなことはどうでもいいよ」

『ああ、すまない。タスクの形はそのまま、その人間を表す。悪しき者のタスクは邪悪な形を成し、心正しき者は美しいタスクを帯びる。タスクは数々の武器を備えているが、それにも個人差があり、心強き者の武器は破壊力すさまじく、その成長により武器もまた成長する。使い方は体が直接知るだろう。タスクは自分の意志で着用することができる。ただ、心の中で呼び出すだけで』

「はいはい話し長いな、あんた。要するに、この紫の宝石であんたやさっきの奴みたいな甲冑が呼び出せるんだな?」

憂弥は早速タスクを呼びだしてみることにした。心の中に向けて、まさに呼びかけるように。