15.
背後からの声に導かれるままに、二メートルほど戻ると左の方に細い隙間がある。光線をかいくぐりその隙間に飛び込むと、夢の中で見たあの男が、墓石に寄りかかって座っていた。近くでみると、その傷は思いのほか深く、憂弥は目の前の男に迫る死を確信した。
「やっと会えたな、紫堂憂弥よ」
消えかかる程の声で彼は言う。
「何であんた、俺の名前を?」
「私はお前なんだよ。なるほどよく似ている。うっ、ご覧の通り私は死にかけている。あまり時間もないようだ」
苦しみつつも彼は続ける。憂弥はただ呆然と相手の話に耳を傾けるだけだった。
「わ、私の名はブレークマン。サラマンダー・ギル・ブレークマンという。君達の知、知らない世界から、やって来た。すまないが受けとって……ぐっ、欲しい物があるんだ。もう、私はダメなようだから」
そう言うとブレークマンと名乗る男の額が一瞬光を放ち、その中からゆっくりと黒い結晶のようなものが姿を現した。それは空中に静止し、やがてブレークマンの掌にゆっくりと落ちた。それは長さ5センチほどの楕円形の宝石のようだ。ブレークマンはその宝石をしばらく見つめた後、憂弥の手に握らせた。
「これは一体……」
憂弥の手の中には黒々と輝く宝石があった。
「レヴィ・ストーン。これを守って欲しい。決して……決して……誰にも渡さないで欲しい。それからもう一つ……」
彼は再び額に手をやり、
「これを君に授けよう。必要なはずだ」
すると彼の額から微かに光がもれ、中から小さな宝石が現れた。今手渡されたレヴィ・ストーンと比べると一回りほど小さい。薄い紫色に輝く宝石はそれ自体がわずかだが発光している。ブレークマンが額に手をやり、その宝石を取ると一瞬にして彼の全身を覆っていた黒い甲冑が消え去る。
(!?)
憂弥は何度目かの衝撃を受ける。甲冑が消え去り、生身となったブレークマンは驚くほどに憂弥と瓜二つだった。
「あ、あんた…俺と…なんで…?」
「ぐっ、あぁ、さらばだ紫堂憂弥。これを額にあて、体内に取り込めば……」
愕然とする憂弥にかまわず、ブレークマンは二つ目の紫色の宝石を憂弥に手渡すと、安心した顔つきで「そろそろ時間が来たようだ。さらばだ……紫堂憂弥。二……つの世界の未来を君に託す」と言って果てた。
憂弥は呆然とそれを見守っていた。ブレークマンの体がみるみるうちに朽ち果てていき、最後には跡形もなく消えてしまった。
