13.

(あのときの深紅は、一体何考えてたんだろ?)

今でも信じられないあの夜の出来事を、憂弥はここ1ヶ月毎日のように考えている。翌朝、昨夜の出来事が現実のものとは到底思えなかったが、シーツに残った痛々しい血の痕を目にし、安堵と後悔と喜びを少しずつ感じた。

食卓に現れた深紅は全くいつも通りで、諒子と軽口を叩きあいながらトーストをかじっていた。何度か、あの夜のことを深紅に問いただそうと思ったが、結局そのきっかけも、ちょっとした勇気も持てずにずるずるとひと月を過ごしてしまった。

(はっきりさせとくべきだろうか?)

いつも、考えはそこで行き詰る。日常が心地よく、深紅との一定の距離感も心地よい。言うまでもなく、深紅に幼馴染以上の好意を持ってはいるが、結局のところはっきりさせた時の変化が恐ろしい。

(深紅は何であんなことをしたんだろう?)

考えても答えは出ないことは1ヶ月で十分わかっていたが、それでも憂弥は考えてしまう。

一通り、いつも通りの思考を巡らすと、ようやく眠気を感じてきた。人気のない保健室の硬いベッドで、憂弥はうつらうつらと夢を見始める。

(最近は同じ夢を繰り返し見ているような気がするなぁ)

そのときもまた、何度目かの夢を見始める。始まりはいつも靄の中だ。その靄がゆっくりと晴れていく。その先にあの男がいるのだ。漆黒の甲冑をまとった男。ひどい怪我を負い、今にも死にそうな男。彼は繰り返し、憂弥を呼んでいる。「ここに来てくれ」と。

その日の夢はいつもと違っていた。ぼんやりと男の周りの景色も見える。

(墓?墓か…)

どこかで見たような、それでいてどこにでもあるような墓地の景色。その墓石に身を任せ、男は苦しそうに天を仰いでいる。憂弥の名を呼びながら。

ゆっくりと男に近づく。男は気配を感じたのか、ゆっくりと憂弥の方を向く。頭部も甲冑に覆われているため、表情は読み取れないが、確かに安堵の吐息を漏らしたように感じた。

その時、景色が歪んだ。