3.
入ってきたのは保険医の葉山美穂だった。
「よう、美穂ちゃん」
布団から手を出し、憂弥が声をかける。
「憂弥!ようじゃないでしょ、ようじゃ」
美穂はゆっくりとした足取りでデスクに向かい、椅子に腰掛けると「朝霧も大変だね、恋人がボンクラで」
「こいつはただの幼馴染です」
深紅が布団を指差す。
「恋人未満です」
憂弥が口を出す。
「誤解を招くことを言うな!」
「いいじゃんか、子供のころお嫁さんにしてって言ってたじゃんよ」
「忘れました」
「つれないなぁ。風呂だってよく一緒に入ったろ?」
「忘れました」
「俺んちで一緒に寝たり…」
「忘れました」
「ファーストキッ…」
「わー!うるさいっ!黙れ!忘れました。忘れてください!」
深紅は真っ赤だ。美穂はやれやれという感じで頭を掻き「朝霧、一応、保健室だから、静粛に願うよ」
「す、すみません…」
「お、いいねぇ美穂ちゃん。もっと言ってやって。だいたい深紅はおしとやかさが足りないんだよなぁ。すぐ、ギャンギャン喚くし…」
「うるさい!いいでしょ!大体あんたが悪いのよ。何で授業サボって保健室で寝てるやつにダメ出しされなきゃならないの?」
「おう、するどい」
憂弥が指差す。
「おう、じゃない!いいから教室戻るよ!」
「えー?やだ」
「やだじゃない!葉山先生からも言ってやってください。むしろ保健室に顔を出した段階で、すぐに言ってやってください」
「お、矛先が変わった?」
「変わってない!攻撃の対象はあくまであんた!」
美穂は深紅をじっと見つめ、軽くため息をつくと「疲れないか?朝霧」
「疲れますよ!」
「ちょっと休んでく?俺の隣で。腕枕しちゃろか?」
憂弥が布団をめくり上げ、自分の横をぽんぽんと叩く。
「…」
「あれ、深紅ちゃん?」
「▲@◇☆○▼※!」
深紅は散々憂弥をどつきまわすと、肩を怒らせて保健室を出て行った。