『恋歌』朝井まかて



タイトルと装丁を見て、
平安時代くらいが舞台の恋愛小説なのかな〜
と、勝手にイメージして読み始めると、意外や意外、
ガッツリ幕末のお話でした。



幕末モノと分かっていれば、もう少し覚悟というか、警戒したのですが、予備知識ゼロ、心構えもゼロで読んでしまったので、心の奥底のデリケートな部分に、まっすぐに響いてしまい、感動の渦…。



「君にこそ 恋しきふしは 習いつれ さらば 忘るることも おしえよ 




主人公が夫を思って詠んだ歌が、何度読み返しても切なくて哀しくて、読み終えて数日経ちますが、未だに気を抜くと涙が…。




20ン年越しの

好きな本ナンバーワンが入れ替わってしまいました。




以前は、いわゆる恋愛物語に遭遇した時、純粋に作中に描かれている相手役を頭の中に再現するか、詳細な説明がない場合は、西島秀俊さんや大沢たかおさんをイメージしていたのですが、今は自然に夫の風貌に重なってしまいます。




好きなひとと結婚するということは、こういうことなのだな、と実感するのと同時に、一生添い遂げる事ができる(可能性がある)自分が本当に幸せだと思います。




「なぜもっと、己の心を三十一文字に注ぎ込まなかったのだろう。戦場の夜も昼もあの人の胸で響き続けるような、そんな言葉をなぜ捧げられなかったのだろう。」




この一文は主人公が夫の詠んだ歌への自らの返歌の不出来を恥じ、悔いているものですが、別れ際、去り際など、いざという時は、




言いたいことはたくさんあるはずのに、何をどう言えばいいか、分からない!!!」




という状態になってしまい、結局大切なことを伝え損ねて後悔することが多いように思います。




やはり日頃から言葉にできることは言葉で伝え、触れ合いを大切にするなど、気持ちを小出しに伝えることは大切だなぁ、と思いました。