今日、一通の手紙を受け取った。

挙式を終えたお客様のお母様からだった。


達筆な文字で便箋にたっぷり5枚、感謝の言葉が綴られていた。


嬉しくて、思わず泣いてしまった。



彼らの結婚式は、
彼のお父様のためにあったようなものだった。

10年前に他界された新郎のお父様。
10年経っても、毎月の月命日にお墓参りを欠かさない家族。


彼らに出会った頃、「今までで一番嬉しかったことは?」と聞いた私に、彼はこう答えた。


「父の形見の時計を、彼女が内緒で直してくれたことですね」


特殊な部品を使う時計だったため、どこに行っても修理を断られていたそう。

彼女は、彼にとってその時計がどんなに大きな意味を持つのか知っていたから、
何軒も時計屋をはしごしたという。



結婚式の一週間前、私は彼から何枚かの写真とメッセージが書かれたメモを受けとった。


一人っ子の彼にとって、もはや唯一の家族となったお母様のために、
天国のお父様からメッセージビデオを届けたかったのだ。


私の手作りだから、プロの出来映えにはなれないけれど、
どうしてもお二人の想いを届けたくて、必死になった。


結婚式当日。

メッセージは無事流れ、
そのあと彼はお父様に手紙を読んだ。

そして、彼女が選んできた鉢植えをそっと遺影に捧げた。


会場中が涙したのは、

単にそのストーリーに感動したのではなく、

父への感謝や家族の愛情、それを素直に言葉にできる彼らの姿に感銘を受けたからだろう。



私自身、彼らから学んだことがあった。


自分の家族を大切にすること。

相手の家族も自分の家族同様に大切にすること。



亡くなった方が、本当に人の心の中で生き続けられること。



私は、彼のお父様に会ったことはないし、これからもない。

でも、今まで出会ってひょっとしたらもう一生会わない人よりも、私の心に残っている。


あの時、あの場に集ったゲスト全員の心の中で、彼らの想いとともにお父様の記憶が残っていくといいなと思う。