おはようございます!!
浦和高等学園の
金子です。
以前、このブログでも書いたことのある「本との出会い」についてですが、
またしても出会ってしまいました。![]()
(買ってから電車の中刷りで大きく取り上げられていました…)
道尾秀介 著 「月と蟹」
この道尾秀介さんの作品は初めて読みました。
いや~~~
少年、少女時代に抱くであろう、
「危うさ」や「悲しみ」を深く情緒的に、
静かに婉曲的に、表現されており、
あたかも自分がその場にいるような錯覚に陥った感覚を味わいました。
解説は、伊集院静さんが
書いているのですが、その中で、
“道尾秀介の生み出す少年、少女は自分が人間であることに戸惑っている”という印象を抱くのだ。
しかも、それぞれの登場人物が、この世の中で
一人しかいない存在(“君だけ”の言ってもいいが)であるのに、その生き方は人間社会の普遍を持つ。
これが道尾のきわだった小説家としての器量と才能であろう。”
私が印象に残った場面を紹介します。
小学生になって最初の冬、風邪でひどい熱を出したときにそれは良く似ていた。
母がリビングに敷いてくれた布団の中で、
全身に力が入らず、薄くひらいた瞼のあいだから
白い天井ばかりを眺めていたとき、世の中のすべてが自分からずっと遠くにあるように感じられ、
厭なことも、面倒くさいことも全部自分とは
無関係のように思えた。
実際にはだるくて仕方がないのに、どうしてか、
その気さえなれば、いつでも走り出したり飛んだり跳ねたりできそうな気がした。
しかも、いままでのどんな瞬間よりも速く、高く、勢いよく。
(中略)
海から上がり、濡れた足に靴下とスニーカーを
履いた。海水のビニール袋を持ち上げて、
もう一度あの山を仰ぎ見る。
歩き慣れた岩場を、そうして山に目をやったまま
歩いていく。自分が進んでいるのではなく、
山の方が近づいてくるように思えた。
この描写は私なりの分析では、
少年、少女期に湧きおこる、
「万能感の現れ」
かと感じました。もっとわかりやすく言えば、
「根拠のない自信」でしょうか…
このような万能感は歪んでいて、
実際には過信に過ぎないのですが、
この時期にこのような万能感を抱くことが出来ることは、
今後の発達に大きな影響を与えるように思います。
いささか、理屈っぽい話しになってきたので、
話しを戻しますが、
少年期に抱くであろう、
悲しさや危うさ、
攻撃性、
妬み、嫉妬、
といった一般的には良くないと言われることの
多い、心の動きを、
とても上手に表現されているなぁ…
と非常に感嘆しながら、
あっという間に読み終えた作品でした。
この「月と蟹」以外の作品も、
今後読みあさっていきたいと思います!!
では。