1.冥土までの暇つぶし

 太陽や星と比べては、話にもなりませんが、不運なもらい事故や病気で早死にするとしても、ほかの動物に比べれば、人の寿命はけっして短くはありません。ましてや、うまく立ち回れば、永遠とは言いませんが、われわれの寿命は、かなりな長さになります。

 一方、教科書やドラマに登場する歴史上人物の多くは、老年どころか(60歳程度を、古希などと言うではありませんか)、男盛りさえ味わうことはかないませんでした。

 寡って人生は、戦乱や事故や病気など不慮の災難の繰り返しで、周囲を見回しても、どううまくかわせたとしても、せいぜい40歳まで生き延びることはないという諦念が、骨の髄まで刻み込まれていました。

 だからこそでしょうが、何かやろうと心に決めた偉人たちは、寝る間も惜しんでひたすら没頭し、短い人生を充実させ、偉業達成したのです。

 ひるがえって、平和で飢えや雨風の心配もない現代日本では、どのようにぐうたらにでも無茶苦茶に生きても、人生は80歳近くまであります。

 何をあくせくする必要があるんだ、どうせ仕事もないし、日がな一日、メールやゲームで十分忙しい、という若者も少なくありません。

 音楽を聴いていれば、ゴロニャンと愛猫が膝に乗っかってくる。ひげを抜いたり、ケーキを頰張ったり、肉球をつまんだりして、あっという間に暗くなります。一杯吞みながらNetFlixやアマゾンプライム鑑賞をしながらいつの間にか寝てしまいます。

 僧侶で小説家、参議院議員でもあった[#@[@kind@]0,S[@ruby@]1,今東光[@yomi@]2,こん・とうこう@#]今東光師が、喝破したように、「人生は冥土までの暇つぶし」ですから、本当に「ゆるゆるの生活? えつ! それがどうした。文句ある?」です。

 何かを成すことが人生を生きる意味ではありませんし、他人に迷惑を掛けることがなければ、どう生きようと勝手ですし、どのように生きることがよいのかなど正答はないと思います。

 長さが問題になるのは、河川やヘビや寿命ぐらいですが、河川やヘビの評価に、灌漑面積や深さであったり、太さや毒の有無などが追加されるように、ヒトの寿命も単に長さだけでないように思われます。

 健康寿命が延長できれば、落ち着いてしたいこともできます。しかし、自分には、したいことも、することも何もない、という方には、この私でも適当な処方箋を今のところお出しすることができません。

 とにかくやりたいこと山のようにあって、なにがなんでも120歳までお願いしたいという方には、目まぐるしく変わる最新の医学情報から具体的なヒントについて知恵を絞って不定期にお話をしたいと考えています(実際、私自身が、120歳を目指していますので、もし、私がその前に死んでしまったら、私の話は全て嘘だと思って、私に文句を言って忘れてください。お願いします)。

なお、私の経歴、出版書籍についてはホームページ内をご参照ください。また、外来診察の際に、ご質問くださっても結構です。

(浦安リウマチ整形外科内科院長・後藤眞)