
若手能といいながらここ数年見る面子はかなり同じ。ただ本当に若い子は声変わりして姿も変わってゆく。まさに木々が芽吹き新緑が葉を広げるのを見る思い。
日本に戻っていろいろ見て聴いてまわって、しかし結局いちばん落ち着くのは能楽堂やとわかるのにそんなに時間はかからんかった。なんせ有料無料とりまぜで、おそらく一番上演数が多く、かつまた見慣れ住み慣れた日本建築をもっとも身近に感じるばかりか、その謡の節回しや抑揚がオレの本業に限りなく近いものでありながら一方では芸能としてまったく違った社会的地位にあることが、生活との程よい距離を形成するから。
それに、人形浄瑠璃とともにココも変な「進化」を目指していろんなものと迎合しない姿勢が良い。「普通」がいちばんありがたく、しかし「普通」がいちばん難しい。京阪電車も直通の普通が半分に減り、残りが準急になってなんか余計使い勝手が悪くなった。
で、いったい見所で何を見て(聴いて)いるかといえば、実はオレにとってこれほど物思いに耽ったり、あるいは何も考えないでぼぉっと出来る場所は無いのである。趣味に耽る以上の効果がある。この日は無料会であったが、これが有料の会でも同じこと。しかも若手会は無料であるに関わらず大抵の場合むしろすばらしく引き締まった演能を見せてくれるので、余計ないちゃもんを考える必要もなく、本当に当面の懸案について深い思考の場をオレに与えてくれる。その懸案とは勿論来春に控えた大きな行事とその準備のことであるが、凡そその事についての思考を暫し保留にして気が晴れるほどに、つまり結局何も考えないままに、なんやしらん重苦しい空気だけが胸からぷしゅうっと抜けていった。まるで熊坂長範の振り回す槍にオレの胸が一突きにされたかのように。

やっぱりお能は一番ありがたい。しかし1日経つとまた気が重く、戻ってしまったが・・・。
8/27(火)
第44回東西合同研究発表会
@観世会館


