「ぼくの生き方」  やなせたかし  


ひとは何のためにうまれたか

ひとはひとをよろこばせるために生まれた


なぜなら

この世はさびしくてつらい

人生はとても速く過ぎる

今日の紅顔 明日は白骨

それならば

なるべく楽しく生きたい


ひとの最大のよろこびは

ひとをよろこばせること


なぐさめあって生きていくこと

喧嘩なんかはとんでもない

それは人生の無駄づかい



と ぼくは思ったが

よろこばせるのが

むずかしい


美しく生まれたひとは

それだけでひとがよろこぶ


歌のうまい人は

歌えばよろこぶ


ぼくは

みかけもよくない うーん 残念!

才能もない

大芸術家にはなれない


政治家も無理

学者になるには勉強が不足

考えあぐねて

ぼくは絵本や童話や漫画をかいた

それでもひどく下手くそで

面白いですか

よろこんでくれますか

ただそれだけでかき続けた



日暮れてはるかに道は遠いが

好きな仕事をしているから

ぼくは毎日うれしかった

苦しむことがよろこびだった


たったひとりのひとでもいい

それから さんにん また よにん

すこしずつ よろこぶひとを ふやす

それがぼくの生き方で

巨匠や名人にはとてもなれない

なりたくても

非凡なひとではないのだから


あんまり

大それた願いはぼくにはむかない

もしも

あなたがここまで読んで

ひどくがっかりしたとすれば

心の底から ぼくはあやまる


・・・・私も人を幸せにしたいな

・・・・私も幸せになりたいな

多くの事は望まず、ささやかな毎日を大事にしたいな

私はこの姿でこの世に生まれて来ました。

私は変わらないようです。

今の私を磨いて行きたいと思います。