私が小学校低学年の頃の話です。




母が体調不良になりました。

熱が出て頭痛がしていたので、最初は風邪かと思い、寝ていましたが良くなりません。




数日たって少し熱は下がりましたが、身体はだるく、仕事に行ける状態ではありませんでした。




その内黄疸が出てきたので、肝臓が悪いのかと入院することになりました。




ですが、治療をしても、さっぱり良くなりません。




熱が出たり他の症状もあったようで、色々検査をしたのですが、原因は特定できず。




3ヶ月程入院していたのですが、治らないまま自宅で療養することになりました。






ある夜のこと。




私はまだ小さかったので、二階の部屋で母と一緒にベッドに寝ていました。




私達が寝ていると、トントントンと誰かが階段を上がってくる音がします。




娘(私)は隣で眠っているし、おばあちゃんかな?

と母は思ったそうです。




そのまま母が寝ていると、目を瞑っているのに周りの状況が見えました。




おばあちゃんかな、と思ったのは間違いでした。




階段を上がってきたのは、買い物かごを下げた女性だったのです。




主婦のような若い女性で、両脇に小さな男の子を二人、一緒に連れています。




母は、自分は夢を見ているのだな、と思い、そしてその女性と子供たちがとても優しい感じがしたので、不思議と怖くはなかったそうです。




その女性は、ベッドに寝ている母の脇に立つと、掛け布団を2回、パタパタと少しだけめくってまた元に戻しました。




そして、そのまま何も言わずに、また子供たちを連れて、階段を降りて行ったのです。





翌朝、目を覚ました母は、すぐにそのことを私の祖父母に伝えました。




そうすると、それを聞いた祖母は、それは大変だ!と近所に住んでいた拝み屋のおばあさんの所へ行ってそのことを聞いてみたのです。




拝み屋さんの見立てでは

その母親と子供たちは、◯◯(地区名)のお不動さまとその眷属だろう、と言うものでした。




母を守ってくれているお不動さまがやってきて、病を祓ってくれたのだろう、と。




その言葉を聞いた母と父は、早速そのお不動さまが祀られている場所へ行き、日本酒をお供えしてお礼をお伝えしました。




お不動さまがいらっしゃった場所は、山の中の道路沿い、小さな祠の中にお祀りされていたそうです。




母たちは、こんな何にもない道端にお不動さまがいらっしゃるのか、と驚いたそうですが、拝み屋さんの言う通りに手を合わせて来ました。




その日以降、母は日が経つにつれてだんだん体調が良くなり、すっかり病気も治りました。




今ではもう70歳を超えている母ですが、ますます元気です。





つい先日、この話を思い出して、母とそのお不動さまのところへ行ってみました。




ところが、行けども行けどもたどり着かないのです。




大体の場所はわかっているので、車のナビを見ながら行ったのですが、それらしきものがない。




近くにいた地元の人たちにも聞いてみたのですが、皆さん知らないと言う・・・。




私は小さかったので、当時一緒に来てはおらず、場所はわかりませんし、もう祖父母や拝み屋さんは他界しているので聞くこともできず。




母も私も???と言う感じだったのですが、もう随分昔のことなので、もしかしたら場所を移されたのかもしれません。





今でもたまに母と話すのです。




このお不動さまがいらっしゃらなければ、もしかしたら母は体調が戻らなかったかもしれない。

最悪のこともあったかもしれない。




お不動さまがどうして母の元へ来て下さったのかはわかりませんが、どこのお不動さまへお詣りしても、大きな加護を頂いたことへの感謝を述べずにはいられません。