いよいよ今日の夜、ホーチミン行の寝台特急に乗る。これのためにベトナムに来たようなもんだ。

ホテルでシャワーを浴び、一休みしていると、東京の彼女から電話がかかってきた。普段は電話なんかしないので、珍しいこともあるもんだ。

 

彼女「久しぶりー今何してるー?」

ワイ「今ホテルにいて…今から駅に行って…」

彼女「そっかー。あのさ、ちょっと言いたいことあるんだけど…」

ワイ「え?なに?(あっ…(察し。これ来たわ)」

彼女「…ごめん、別れよ」

ワイ「…(直観的中wwwwwwwよっしゃー!)」

 

大体彼女とか、ちょっと作ってみたけどマジで金と時間の無駄で何も面白くない。話が微塵も合わないし、正直別れられてほっとした。これはもう負け惜しみでもなんでもなく、たいして美味くも無いのにクソ高くて量の少ないナントカ豚のオサレなハンバーグを新宿御苑前で食わされて「わー美味しいねー(棒読み)」なんて言うよりは、一人で海外旅行に行って言葉の通じない路上の店で何が入ってるか分からないフォーを食べてみる方が何倍面白いか。つくづく別れてよかったわ。彼女いる奴は明確に負け組です。

 

ホテルからハノイ駅にバイクタクシーで向かう。料金は2㎞半ほどで10万ドン(600円)。

 

気を取り直して、ハノイ駅。今日はここからホーチミン行の列車に乗る予定である。ハノイ発が20時55分、ホーチミンに着くのは翌々日の朝。SE1列車だ。

一般的に、列車番号1というのはその国を代表するような列車に付されるものである。日本ならかつての東京発長崎行寝台特急さくらとか、今でも新幹線では東京発博多行のぞみ1号とか、そういう栄光の列車に付される列車番号である。

 

駅を見物すべく、19時半ごろハノイ駅に着く。駅舎は立派だが、あまり内部には活気がない。


20時15分ごろ、やっと改札が始まって駅構内に入れるようになる。今回の旅行で間違いなく一番興奮した。予約時のメールに載っていたスマホのQRコードを示すだけで通過できた。えきねっとなんかより何倍も便利でスムーズである。



 

とりあえずホームを歩いて何両客車が繋がっているのか確かめてみる。怪しい日本人の鉄道マニアである。

先頭はディーゼル機関車。

2両目が荷物車。日本ではもう見られない車両だが、ベトナムでは健在のようだ。ホームに車が来て、荷役の作業をしていた。

3両目が食堂車。

4両目が座席車。片側2列のリクライニングシートが並んでいる。

5-7両目が3段式の二等寝台車。

8-13両目が2段式の一等寝台車。

14両目が一等寝台車と電源車の合造車。

15両目も荷物車で最後尾。この客車だけ明らかに旧式の車両であった。





一応列車の時刻表もここに貼っておこう。終点のホーチミンまで1726㎞、33時間55分の旅である。日本じゃできない鉄道の旅が、今、ここにあるんだ。


僕の寝台は9号車の9番。1等寝台の下段を指定した。しかも車両中央部で揺れも少なく、進行方向を向いて外を見れる向きという最高の席だった。

上段にはベトナム人の中年夫婦、隣は犬を連れ、脚に入れ墨の入ったベトナム人の若いねーちゃん。この3人は乗るや否や寝台に横になって寝てしまった。僕は外が見たかったので申し訳程度にカーテンを開けて外を覗くことにした。

 

20時54分、定刻より1分早く、我がホーチミン行き、SE1列車は静かに動き出した。心躍る瞬間。売店で買った333ビールを開ける。

 

無数のバイクが行き交う大通りと並走する。速度はそんなに速くなく、30㎞/hと言ったところだろうか。車内放送といったものはなかった。ネオンが派手に光り、住居や商店が広がるのは日本と変わらない。色々と目につくものを写真に収めたり、メモしたりする。

郊外に出るにつれて、家が少なくなり、列車の速度も上がってきた。規則正しく車輪がジョイント音を奏でる。日本の在来線よりはだいぶ揺れるけど、まあ許容範囲だ。ベトナムの線路幅はちょうど1000㎜で日本の1067㎜とほぼ変わらない。もちろんこれは前者はフランス、後者はイギリス(1067㎜₌3フィート半)の影響である。


客車列車の乗り心地をかみしめ、流れる景色を眺める。

ウトウトするうちに最初の停車駅に着いた。明日もあるので目を閉じることにする。