目が覚めた時、一瞬どこにいるのか分からなかった。次の瞬間、自分は今ベトナムにいるのだ、と気づく。

ベットのカーテンを開けようとすると、隙間から同部屋の白人女性が平気で着替えているのが見える。こういった白人のラフさは日本人には非常に気まずいので、とりあえず見なかったことにして、着替え終わるのを見計らって外に出た。

ホテルの朝食はバイキングになっていて、パン、サラダ、果物、おかずが何品か、あとコーヒーがあったが、どれも口に合って美味しかった。

 

今日はハノイから北東に100㎞ぐらい行ったところ、ハロン湾という巨大な石灰岩が海に立ち並ぶ有名な所に行くつもりだ。ここはかなり有名な景勝地であり、ベトナムに行ったら是非行きたかった。本当は自分で行きたかったのだが、交通状況があまり良くなく、現地ツアーというのを頼んだ。

 

8時30分ごろ、ホテルにツアーのガイドが迎えに来る。ベトナム人の気さくな青年で、ポロシャツにジーパンというラフな格好である。そのままバスに乗せられる。どうやらいくつかのホテルをめぐってそこで客をピックアップするようだ。客は白人が多いが、アジア人も3割ぐらいはいた。

それにしてもこの狭いハノイ旧市街の道に大型バス。しかも路駐やバイクや屋台やらでごった返し、僕は一番後ろの窓側に座っていたのだが、何回後ろを擦るんじゃないかとヒヤヒヤしていた。

 

バスは市内をうろうろして、やっと9時半ぐらいになって幹線道路に入った。ガイドの青年が「僕の名前はPhong。ベトナム語で風という意味だ。ところでみんな、エアコンの風は寒くないか?」みたいなことをベトナムなまりの英語で言ってバスを盛り上げてくれる。僕もこれぐらいは聞き取れる。それにしてもベトナムの人は英語が上手い。圧倒的に日本人よりも話せると思う。

 

高速道路に入り、バスは120㎞/hぐらいの速度で平地を走る。途中一回パーキングエリアで休憩し、11時20分ごろ、海沿いの道の駅のような所に着いた。ここは真珠の販売やらを行っているのが僕は全く興味がないので適当にぶらぶらしていた。つまらないけどツアーだから止むを得ない。

30分ほどでそこの滞在を終えるといよいよガイドが「今からバスでマリーナに向かって、船に乗ってハロン湾クルーズをするよ。でもハロン湾は環境保全のため、no plastic cupsだ。」と説明する。

 

(マリーナで船を待つ。全部観光船。ハロン湾は超有名観光地である。世界中の人が押し寄せるのだろう)

 

船にぞろぞろと乗り込む。船の中にはテーブルがあって、どうやらここで昼食を食べながら石灰岩のある海域まで進むようだ。

僕のテーブルは白人の父親と息子、娘(と言っても子供が僕ぐらいの年齢)の3人組と、一人で来ているめっちゃつまらなさそうなインド系の太った女の子と、アジア人の人の良さそうなおじさん。後で話したらこの人は韓国の人だと判明する。日本人も向こうのテーブルに一組居たが面倒なので声はかけなかった。

知らない人と同じテーブルで飯を食うのだが、別に会話も無く、そんなに困ることも無かった。僕と隣の韓国人のおじさんにはわざわざ箸が出てきたが、他の4人はなんでも手づかみである。箸文化、素晴らしいな。

(正面左にある揚げ春巻?みたいなのが美味しかった。)

 

けっこう景勝地の海域までは遠く、3,40分は航行したかと思う。前方に石灰岩が見えてきた。みんな食事を中断して席を立ち、甲板に出る。

 

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(地球の歩き方によれば、一番有名な「闘鶏石」と呼ばれるものらしい。ガイドは「kissing してるよ」って言ってたけれど。)

 

 

結構どの岩も個性があって面白い。こんな海上でも豊かな緑に覆われているけど、鳥が種を運んでいるのだろうか。

見ていると岩の感じが、1月に行ったJR伯備線の井倉峡によく似ていると思ったが、どっちも石灰岩だから当然と言えば当然か。

 

結構な時間航行したのち、沖合のTi Top島という半径1㎞ぐらい?の小島に着く。ここで少し休憩らしい。どうやらこの島はハロン湾の島々(岩々?)のうち、観光用に犠牲にされた開発されたような感じだ。

ガイドに45分後に船が出発するからそれまでに戻ってきてね、と言われる。僕は高さ91mの頂の展望台まで上がることにした。すごい急な階段、そして観光客で押し合いへし合いである。

 

展望台からの景色を見た時は、さすがに感動した。四方に広がる海ににょきにょき突き出す岩。靄が掛かっていて、遠近感を感じる。登った甲斐があった。天気が悪いけど、逆にそれが幻想的な感じでいいかもしれない。

(展望台の眺め。言葉では言い表せないような、すがすがしい気持ちだった)

 

記念写真を押してもらう。しかしそれにしてもすごい観光客(主に中国人の団体)で、写真を撮るのもやっとである。

そのあとはビーチを歩いたり(でもこの海域に砂浜は無いと思うから、人工的に砂を運び入れたような気がするんだが)、土産物屋を覗いたりした。

 

(怖いイッヌ。今回の旅行では犬を見るたびに狂犬病持ってるんじゃないかと気が気ではなかった。)

 

続いて少し別の船着き場に移動して、小型のモーターボートに乗る。これはオプションで確か25万ドン(1500円)であったが、時速50㎞ぐらいでめちゃめちゃに飛ばしてスリルがあって面白かった。舵をスリル演出のため右や左に切るので、遠心力で外側に飛ばされそうになったり、内側の時は海すれすれまで傾いて死を予感した

(人の横顔をした岩。他にも亀の形の岩、蝶の形の空洞、女性が横たわったような感じの岩など、ガイドが教えてくれた)

 

その後、普通の手漕ぎボートにも乗せてもらったりして色々巡る。世界中の観光客が押し寄せている。

(人しかいない。こりゃオーバーツーリズムだわ)

しかし静かなハロン湾なのに、中国人の団体が船上で大声で合唱したりして雰囲気が最悪であった。まあ中国は歴史的背景を鑑みても、ベトナムのこと自国領土だと思ってるから仕方ないか…

 

その後もう一個島を移動して、鍾乳洞を見た。鍾乳洞は日本とそんな変わらないので割愛する。とにかくここも外国人観光客だらけだった。

 

これにて今日の行程は終わり。後はマリーナに戻り、バスでハノイまで帰る。それにしてもなかなか面白かった。ツアーだからつまらなかったらどうしようと思っていたけど、現地ツアーなのでほどよく異国感もあり、ツアーでしかできないことも経験できたし。

帰りはもう日が暮れかかっていた。僕は船のデッキに出て、夕もやの中に消えゆくハロン湾の景色をとにかく目に焼き付けた。幻想的であった。