大学生の春休みなので、海外に行こうと思う。行きたい国はいくつかあるが、ベトナムに1週間ほど行ってみる。ベトナムに行きたい理由はいくつかあるが、

・開発途上国とは今現在、どれほど成長しているのか見てみたい

・アジア、こと東南アジアの文化や町並みはどんなものなのか見てみたい

・熱帯性気候はどれぐらい暑いのか肌で感じたい

・南北統一鉄道という、景色のいい路線に乗ってみたい

・アオザイを着た美女が見たい

などである。

 

ベトナムはインドシナ半島東部にあり、南北は1700㎞に及ぶも、東西は一番狭い所で40㎞しかない、S字の形をした細長い国である。

首都は北部ハノイだが、最大都市は南部ホーチミン。政治は社会主義国だが、市場経済を導入している。言語はベトナム語、人口はもうすぐ1億人に届くと言われている。前置きはこれぐらいにして行ってみよう。

 


3月17日日曜日。

5時過ぎに自宅を出て、成田に向かう。成田までは成田エクスプレスや京成スカイライナーとかいう便利なものもあるのだが、僕はけちなので、もちろん地道に京成のアクセス特急で行った。

今回の旅行は独りぼっちで1週間も海外に行くので不安も大きいが、もちろん楽しみだ。

 

成田の第二ターミナルに7時半頃着く。ベトナムの格安航空(LCC)、Vietjetのチェックインカウンターは一番端っこで、しかもえらい混んでいる。

さて、今回は預け入れ荷物なし(けちですからね)、機内持ち込みのリュック一つで行くつもりだ。大体日本人はスーツケースが好きすぎる。日本人特有の集団意識かよ。リュックのほうが両手が開くし、砂利道や階段とかを気にしなくていいし、ヨーロピアンスタイルで格好いいのに。

そんなことはともかく、なんでも機内持ち込みの荷物は重量が7㎏までらしい。しまった!僕はリュックのサイズばかり気にして、重さのことをすっかり忘れていた。

やっと僕の番が来て、リュックをはかり台に乗せる。8.1㎏。終わった。

…と思ったがカウンターのベトナム人の青年は「ウーン、チョット中身調整シテネ、デモ7.9㎏マデナラ大丈夫ヨ」と言って、航空券を発券してくれた。僕はベトナム人のおおらかさに心から感謝した。ついでに1000円課金して窓側の席にしてもらった。乗り物に乗ったら外を見るのは僕にとって義務のようなものである。

 

手荷物検査、出国審査はささっと終わり、搭乗口に向かう。狭い機内は嫌なので、ギリギリまで待機して搭乗。機材はエアバスA321、片側3人掛けのナローボディ機だった。客室乗務員は赤いポロシャツを着た、はつらつとしたベトナム人の青年が多くて頼もしい感じだ。


9時27分、定刻より3分早く動き出す。

実は僕が飛行機が大嫌いなのだ。理由は簡単で、墜ちるんじゃないかという恐怖があるからである。なので極力乗りたくないのだが、さすがに外国に行くときは止むを得ない。

滑走路に入る。飛行機は離着陸時が一番危ないという。あと数分後には僕も死んでるかもしれない、と、これは毎回滑走路に入る度に思う。脂汗が垂れる。

しかしもちろんそんなことは杞憂で、無事安定飛行に入った。左の窓の下には富津岬や僕の愛する三浦半島などが見えた。

 

静岡県、大井川を過ぎたあたりから一面が雲になって、何も見えなくなった。しかも南側なので窓なんか開けたら眩しくてやってられない。窓を閉めてガイドブックを一通り読み、時計の針を2時間戻すと、もう後はすることがない。LCCなのでモニターも無い。はよ降りたい。ハノイまでの所要時間は6時間半である。つらい。

 

隣の人と話してみる。日本の大学生で、4人で旅行らしい。

「退屈ですねー」

「本当に!私もうすぐ着くんじゃないかって、もう3回ぐらい思ってるんですけど!」

「ええ本当に。まだ2時間しか経ってないですよねえ…」

 

お昼になったので機内食を食べる。LCCなので有料だが、腹が減ったので頼むことにした。日本円で払ったが、おつりはベトナムドンであった。ホーチミン氏の顔が印刷されている。

大体1ドン=0.0059円で、1000ドンでやっと6円ぐらい。ゼロが多すぎて、最初は苦労した。ちなみにベトナムには硬貨というものが事実上存在しない(あるにはあるが流通してない)らしい。



ハノイまで6時間、ずっと雲しか見えなかったが、ついに高度を下げ始め、ベトナムの景色が見えてきた。青々とした水田と、赤い屋根の家が見える。いよいよ来た。




定刻より少し早く、無事ハノイに着陸した。湿度がまとわりつく感じがする。ちなみに、ハノイは熱帯(最寒月の気温が18℃以上)ではなく、温帯(温帯冬季少雨気候)である。間違えた人はしっかり復習しておきましょう。

 

入国審査。さっきの大学生の集団と一緒に並ぶ。高校の知り合いらしい。なんかこの人たち、いい人なんだけど、ものすごい癖のある変な奴らである。飛行機の中でもやたら小難しい話をしていたし、今もずっと学歴の話とかしてる。

「私東大受けたんですけど、落ちて上智なんですよー。今年は世界史大論述の傾向が変わって…」

「あ、でも僕ももともと東大志望だったんですけど二浪して一橋ですよww」

「マジすか??いま好感度3倍ぐらい上がりました!ww」

 

どう考えても場違いな会話をするうち、僕の番になった。保安官のおばさんはちらっと僕を見て、ハンコを押して終了。質問や帰りの航空券の提示など一切なかった。税関はただ通路を通るだけで終了。この国の保安は大丈夫なんか??

 

さて、ともかく、ついにベトナムに着いた。今、僕は日本から3600㎞も離れた所にいるんだ。