7日午後、北里の腸閉塞外来を受診してキマシタ。


2階の消化器外科待合の椅子に座って、順番待ちしているときも、
受診同行してくれた緩和ケアサポさんに「これまでドクター運がないですからね~」と
ボヤいていたー。
名前を呼ばれて、緩和ケアサポさんと共に診察室に入る。
センセイに「歩行が不安定なもので、友人に付き添ってもらってきました。友人も同席して
よろしいですか?」と伺ったら「どうぞ」とのお返事なので、うらん後方の椅子に座ってもらう。

あらためて、センセイと対峙する。
センセイがたいへん丁寧に自己紹介してくださった。(座布団1枚目~)
そして、持参したCDの画像が表示されたモニタ画面をうらんも見ながら、
うらんのイレウスに対するセンセイの所見を述べられた。

「ボクの診たてでは癒着はないです。」

はい・・・?( ̄▽ ̄;)
想定外のお言葉。

これまでずっと、癒着性イレウスとの診断で、癒着箇所は複数ある、だの
その癒着は強固で剥離するのは難しい、だの、さんざん「擦り込まれて」きたので
俄かに「癒着はない」とのセンセイの言葉が飲み込めない。

目が点になる、うらん。
「ただ」
センセイが説明を続けられる。
「放射線性腸炎で、腸管がかなりむくんでいます。このむくみは不可逆性です。」
不可逆性とは元に戻らない、治らないことを意味する。

この後のセンセイの説明の中で、むくみの程度を「チクワ」に例えて表現された。
「チクワ」

一昨年、ガンの直腸への再発転移を疑って、ガン治療を受けた大学病院の
婦人科で検査した際にも、担当医が放射線治療の副作用で、子宮口が
既に瘢痕化していると言われたときも「チクワ」を例に出されたっけ、、

今後、チクワはあんまり食べたくないな、、(-_-;)

癒着がないとしたら、剥離手術自体の選択肢もなくなるということだし~、
むくみでも通過障害が起きるんだ~、腸が閉塞するんだ~
なんて考えているあいだも、センセイのお話は続いていて、

腸閉塞になる患者さんの中には水を飲んでも詰まること、
そして治療の選択肢や手術の利点欠点も包み隠さず、提示された。

癒着と治癒は同義で、同じ原理で起こっています、
傷がくっつくように、癒着を剥がしても再び癒着が生じます、などなど。

この後は来月「小腸造影検査」を行って、その結果に基づいて、
「うらんさんと一緒に治療方針を考えてゆきましょう」ということになった。

この「うらんさんと一緒に」というところで座布団2枚目~。

センセイがうらんが腸閉塞を起こすようになって経緯について質問された
時点で、持参した「医師への伝達事項メモ」をお渡ししていたのだが
それにざっと目を通された後、
「コレ、戴いてもイイですか?」と仰ったので、座布団3枚目~。
(大概は目を通した後、お返ししますーとなることが多いのだ)
さらに一緒に持参した「ガン治療後の救急搬送履歴」についても
ご所望された。

コレには入院期間も記録してあるので、後で掲載するけども、センセイが
書かれた文章内の「保存的治療を繰り返すと再発率が徐々に上昇」
して、保存的治療の効果も減弱する、ということを、うらんが身をもって
証明しているのがわかると思うのだよね~。

腹部触診も終わり、では次回、という際に
センセイが立ち上がって「今日は(来てくださって)ありがとうございました」と
頭を下げられたのには感服した。
診察が始まるときにも、センセイは「ありがとうございます」と言われたのだけど

これまであっちこっちの病院に行ったし、パパの看護をしていた頃も、大勢の
医師と会う機会はあったものの、医師のほうから「ありがとう」なんで言われる
センセイはついぞいなかった、、
だいたい、「ありがとうございます」だの「ございました」だのは患者の専門用語
といっていい。医師は言われる側だから、患者にお礼を言われても、椅子に座ったまま

頷くのがせいぜい。

これは単にいわゆる「腰が低い」というよりも「実るほど頭を垂れる稲穂かな」
この諺が頭に浮かんだ。
人格もご立派だが、お話を伺っているあいだも、「患者の思いに寄り添って
くださる」と感じられた。
うらんのメモを見ながら「うらんさんの、再発率を下げたいとの気持ちはよく
わかります」と言ってくださったことからも。

うらんのほうも「こちらこそ今日はありがとうございました、来てヨカッター」と
頭を下げて、診察室を辞した。

今後、うらんのイレウスがどうなるのか、まだわからないから、手放しで
喜べないのだけども、
感動できる医師に出会えたことで、座布団4枚、5枚目~。

この後に、センセイが病院情報誌に書かれた文章を勝手に転載させて
頂くが

センセイも腹腔鏡手術は100%ではない、と仰った。術後にまた閉塞が
起きる可能性もあると。
実際、以前「腸閉塞難民」の言葉を知った、某女性患者さんのブログに
手術の翌日に腸閉塞を起こしたとコメントを入れた方がいらしたので、
100%でないことは知っていた、

しかし、これまで目にしてきた「北里で腹腔鏡手術を受けた」患者さんの
体験談は成功談が殆どで、中には腹腔鏡手術を受けさえすれば、
腸閉塞が「完治する」=再発しない、、かのような表現で
読者に誤解を与えかねない記事も散見された。

金メダル確実と思っていたオリンピック選手が銀メダルで終わると、
銀メダルも立派なものなのに、期待値が大きかった分、その成績に
満足できないのと同じように、
100%問題ない、もう再発はない、と思って受けた手術の後に
再発したりすると、ものすごくショックを受けるだろう、、
だから、あらかじめ「再発も起こりえる」とココロに留めておくことも
必要だと思うのだ、、

そのあたりに関して、センセイも「術前にしっかり説明して」
「十分に納得してもらってから」と(この後の転載文に)書かれているのだけど、
そのような事前説明があったと書かれている体験談を見たことが、、たぶん、、
ないかな~?なので、
まぁ、老婆心だと考えてクダサイ。(^-^;



ココから↓

『北里研究所病院だより』2024年1月号より抜粋して転載。
特集:負担の少ない「腹腔鏡手術」で患者さまのQOLを守る
一般消化器外科 副部長 矢部伸成センセイ


◇患者さまの満足度が高い腸閉塞の腹腔鏡手術

腸閉塞とは、腸の中で内容物が流れなくなる状態のことで、腹痛や腹満、嘔気や嘔吐などの症状が起こります。原因はさまざまありますが、最も多いのは開腹手術で起きる癒着性腸閉塞です。
開腹手術を行うと傷が治る際にその裏側にある小腸が一緒にくっついて癒着することがあります。

小腸は本来おなかの中を自由に移動する臓器なのですが、癒着した箇所を中心にねじれ、内容物が通りにくくなって腸閉塞となります。
腸閉塞の治療として一般的なものは絶食や輸液、減圧などの保存的治療ですが、保存的治療を行っても腸閉塞を繰り返す患者さまには癒着を剥離する腹腔鏡手術が必要です。
当院のホームページなどを調べて腸閉塞外来を受診される方が多く、手術適応の癒着性腸閉塞の患者さまは手術を選ばれることが殆どであり、多くの手術を行っています。

腸閉塞の手術の難しいところは、癒着をきれいに剥がして癒着防止剤を利用し、癒着をさせないために精一杯の努力を行っても、ヒトが持つ体にある傷を治そうというしくみによって、癒着が再発する可能性が大いにあるということです。
検査の結果、手術を行うことになった場合、術前に再発する可能性があることをしっかり説明して十分にご理解いただいてから腹腔鏡手術を行います。
嬉しいことに、手術を受けられた多くの方の満足度が非常に高く、以前は食べられないものが食べられるようになったなどど良い感想をたくさんいただいています。

◇その人らしさを尊重しながら共に病気と向き合います。
日本では、13万人以上の患者さまが癒着性腸閉塞を発症していて、そのうち3万人が腹部手術を受けています。7割以上の患者さまはチューブによる腸管減圧をはじめとした保存的治療を受けているといわれています。

癒着を解消しない保存的治療と、新たな癒着を生じさせる可能性のある外科的治療のどちらを選択すべきかは、依然として議論の的となっています。
例えば3万2583人の癒着性腸閉塞による腸閉塞患者を対象とした研究では、2万4648人(76%)が保全的治療を受け、このうち1万8093人(73%)は再入院を必要としなかったという報告もあります。

しかし、系統的レビューとメタ分析によると、癒着性腸閉塞の外科的治療は、将来の再春リスクが低いことと関連しており、少なくとも絞扼(※腸管の圧迫による血流障害)の疑いが低い症例では、外科的治療を受けた患者と保存的治療を受けた患者の間で、死亡率、合併症発生率、術後在院日数に顕著な差はみられなかったという報告もあります。
さらに、再発を繰り返す癒着性腸閉塞患者を対象とした研究では、大腸がん術後に発症する腹部症状に対して保存的治療を繰り返すことにより、再発率が徐々に上昇し、保存的治療の効果自体も徐々に減弱することが報告されています。

再発を繰り返す癒着性腸閉塞患者は大腸がんの年間あたりの罹患数に匹敵します。
多くの患者さまが悩まれているのはいうまでもありません。
外来で保存的治療を続けてきた患者さまから、料理番組が嫌で仕方がない、家族の中で自分だけいつも別メニューなのが寂しい、生涯スープだけの食事は切ないなどと辛い胸の内を伺うと、食事の制限がいかに大きな楽しみを奪うのかと思います。
今も保存的治療を続けて毎日辛い思いをしている方が、手術を受けることで少しでも良くなるのであれば、是非一人でも多くの患者さまのお力になりたいと願っています。

外科というのは患者さまの身体に傷をつけて治療をする科なので、病気を治すということに対して全力で丁寧に対応させていただきたいと思っています。
病気だけではなく患者さまご本人に向き合い、その方らしさを常に尊重して一緒に病気に向き合ってまいりますので、是非気兼ねなく病院にいらしてください。
 

転載ココまで。↑

同じように腸閉塞、イレウスに苦しんでいるどなたかの参考になれば幸いです。
うらんの北里受診を後押ししてくれた、腸閉塞仲間の皆さんへの感謝を込めて。